キャロルが「好き」と言った回数が見えるようになったのは、とつぜんだった。どのくらいとつぜんだったかというと、結婚前日の朝である。

「お嬢様、朝ですよ。そろそろ起きてください」

 カーテンを引く音と、顔に当たる陽光のまぶしさに目蓋を開ける。侍女長のタリアと他数名が、キャロルが眠るベッドの周りでせっせと朝の準備を始めていた。

「おはよう、タリア。良いお天気ね……」

 のっそり起き上がったキャロルは、目覚めの紅茶を差し出すタリアを見て、きょとんとした。