「お好きな人が他にいてもいい……今夜だけは、わたくしのものでいて……」

 幸せそうに微笑んで、寝息を立てはじめる。
 レオンは、ベッドに腰かけて、眠るキャロルを見つめた。

「……俺は、君がこの世に生まれてから、ずっと君だけのものだよ。君が信じてくれなくても」

 指輪をはめた手を取って、そっとキスを落とす。
 じかに感じる熱い体温に、胸がしめつけられた。

(熱をあげるまで探しまわるほど、俺が信じられないの?)

 キャロルは、レオンの気持ちを疑っている。
 好きな相手に愛情を疑われるのは、身を裂かれるくらい悲しいことだと、レオンは初めて知った。
 だが疑われても、キャロルへの気持ちは変わらない。

「キャロル、君を愛してる……」

 いつか信じてもらえるように、レオンは目を伏せて祈った。

 当のキャロルは、自分がどれだけ愛されているのか知らないまま、朝まで夢のなかにいたのだった。