走るのは通ったことのない道だった。
 二階建てのアパートのベランダから、通りをまたぐように『王太子殿下の十二夜』を祝うフラッグが渡されており、家々の軒先には、王族の結婚をたたえるためのブーケが飾られている。

(わたくしとレオン様の十二夜を喜んでくださっているのね)
 
 レオンが十二夜を止めたくない気持ちが分かった。十二夜がご破算になれば、この日を待ちわびた国民はがっかりしてしまう。
 それを目指して行動しているキャロルは、国賊とも言うべき裏切り者だ。

(皆様、ごめんなさい。レオン様のお幸せのためなのです。責めるのは、わたくしだけにしてくださいませ)