それに、おかしな挙動をしている人物もいない。
 城内に好きな相手がいれば、王太子の婚約者が探し回っていると聞いて焦り、普段とちがう行動をとるだろうと思って、キャロルは人を雇わず自ら行動したのだが、そういった素振りをしている人は一人もいなかった。

「ということは……、相手は王城の外にいる?」

 レオンは、城の外で出会った女性に、自ら通って愛を育んでいるのではなかろうか。それなら、城内で探り当てられるはずはない。

「こうなったら、ネズミのように城門をかいくぐって、城下にいかなければなりませんわね」
「いけません、キャロル様」