「よろしくない状況ですわ……」

 キャロルは、ガラスケースに飾られた三輪の薔薇を、じっと見つめていた。
 これまでに渡されたのは、一夜目の『感謝』、二夜目の『誠実』、三夜目の『幸福』だ。レオンとキャロルの十二夜は、じつに順調に進んでいる。

「薔薇を渡されないために逃げる作戦も失敗。立てこもりも失敗。レオン様のお好きな方を見つけ出すために、秘密の小部屋まではたどり着きましたけれど、相手のお顔は見られないまま、どさくさまぎれに三輪目を渡されて、これも失敗……」

 キャロルなりに頑張ったのだが、どうにも上手くいかないのは、ここがレオンの息のかかった王城だからだ。
 使用人や騎士に箝口令が敷かれていて、誰一人として口をわらないのである。