そう言って、レオンは手近にあったブランケットを、侍従の体にかけてあげた。

「彼、いつも水差しの毒見をしてから俺の寝室を離れるんだ」
「毒見役だったのですね……」

 高貴な身分のものは、毒見役が安全をたしかめた食物しか口にしない。
 王太子であるレオンの周りは特に厳重で、お茶のときにいただくケーキや、騎士団の稽古中に飲む水まで、異常がないか確認されている。

 キャロルは、日頃から毒見をさんざん見慣れていたというのに、その存在をすっかり忘れていた。

「さてと……」