「なぜそれを……」
「セバスティアンの愛用の品だから見覚えがあったんだ。もしも味見して寝入ってしまったら、キャロルに三夜目の薔薇を渡せなくなってしまうと思ってね。もちろん、渡したのちに目の前で飲んで、感想を伝えるつもりだった。十二時を越えるまえに、うたた寝してしまったのは反省している。最近、少し無理をしていたようだ」

「では、あの音は? わたくし、たしかにグラスに注いだ水を飲む音を聞きましたわ!」
「ハーブ水を飲んだのは、彼だよ」

 レオンが支度部屋の戸を開けると、ソファに侍従がうつぶせに倒れ込んでいた。

「侍従どの!?」
「ハーブ水の効果は絶大だね。すっかり安眠している」