とある企業の恋愛事情 -ある社長秘書とコンビニ店員の場合-

 俊介は少し車を走らせてもう少し都心部に近付いた。

 帰宅ラッシュで道路は混んでいるが、これから行こうとしている場所はおそらく空いているはずだ。適当なコインパーキングに車を停めて、外に出た。

「少し歩けるか?」と尋ねると、綾芽は頷いて俊介の横を歩いた。

「あの店に勤めてどれくらいなんだ?」

「去年の夏からなので、まだ一年も経っていません。前のお店はなくなってしまったのでいろいろ探して、あそこに」

 綾芽も色々あったのだろう。あれから二年だ。彼女は少し大人っぽくなったように見えた。

 俊介はしばらく歩いて公園に入った。会社の近くにある公園よりも整っていて、道が明るい。人もそこそこいる。俊介はあまり来たことがないが、イベントごとをよくやっているので知っていた。今も、何かやっていた後なのかキッチンカーが数台停まっていた。

「綾芽さん、お腹空いてる?」

「はい、ちょっとは……」

「じゃあ、なにか買ってくる」

 俊介はキッチンカーに近づいてメニューを眺めた。もともとイベント用に用意していたものなのかあまり晩ご飯向きではないが、雰囲気は味わえそうだ。

 軽食とアイスコーヒーを買って、綾芽のところに戻った。

「あ、あの……」

 綾芽はなにか言いたげだ。多分、遠慮しているのだろう。たかが数千円でも、彼女にとってはいまだに大金らしい。

「じゃあ、また今度綾芽さんが何か作ってくれ」

「……俊介さんはいつもそうやって誤魔化しますよね」

「いいや、本気だ。綾芽さんの手料理はなかなか食べれないからな」

 そう言うと、綾芽は恥ずかしそうに俯いた。

「私のご飯より……俊介さんの方がずっと上手じゃないですか」

 拗ねた彼女も久しぶりだ。俊介は思わず口角をあげた。

 行こう、と言って綾芽の手を握ると、綾芽はぎこちなく握り返した。