懐かしい感覚に心がくすぐられ、自然と口角が上がったその時、



「抜かれた!カバー!」


という鋭い声を置いてきぼりに、ふわりと、1人の女の人がゴールを決めた。


それが、あまりにも綺麗で。


体格差のある相手を抜いたとは思えない華奢な足でスタンと着地したその人は、1つに結んだ黒髪を揺らして、ナイッシュ〜と駆け寄っていく男の人にペコリと頭を下げる。


その全ての動作が洗練されていて、目が離せない。


あの人だけ身にまとっている空気が澄んでいるかのような…。


「すごい綺麗なシュート…」


「うーん、あの子は見覚えないなぁ。たぶん、1年生だよ」


「え、そうなんですか!」



てっきり、綺麗な先輩だなぁなんて思ってたからびっくりだ。身長も165cmくらいありそうで、同学年だと思えないくらい大人っぽく見える。




「今日はアフターあるし、あとで話しかけてみたらいいと思うよ!」


頑張れ!とにっこりと笑う先輩に、ぺこりと頭を下げる。


アフターというのは、サークルの後に皆でご飯を食べたりすることらしい。


来る子もいれば、来ない子もいるらしいけれど…


……あの子もアフター来てくれたらいいなぁ。