「3の人はこっちで!」


男の先輩の声を合図に、私は平静を装って近つく。



あの子の近くに行ける。話せる。近くで見れる。同じチームだから、仲良くなれるかも。



それだけで、なぜだかすごく高揚する。



キュッっとバッシュの音が止まって、隣に存在を感じて、でも見すぎて変にも思われたくない。


………なんて視線を漂わせた時。





「ね、前も来てたよね?ドリブル上手いな〜って思ってて。あ、私は綾瀬咲[アヤセ サキ]っていいます」



澄んだ声が、私の耳に届いた。




まさか、こんないきなり話しかけてくるなんて。



「あっえっと…橋本、佳奈です」



私も前のシュート見てました、はやばい?



「綾瀬さん…も前来てましたよね…?」


さり気なさを装って恐る恐る返せば、綾瀬さんはパッとした笑顔で頷いた。




そうなの、大学でもバスケしたくて。飲みが激しいのは嫌だし、男女比同じなのがよくて。それに、ここは女子もみんなプレーヤーだし。



どこか周りと違う凛とした空気をまといながら、綾瀬さんはするすると言葉を紡ぐ。



周りはうるさいはずなのに、なぜか彼女の声だけがクリアに聞こえる。


彼女だけが輝いて見える。



半ば夢見心地で、私は食い入るように目の前の美しい人を見つめた。