雅ちゃんはメイドさんに呼ばれて暗い顔をして出ていった。

「雅、なんか雰囲気暗かったな」
「雅ちゃん、お父さんとあんまり仲良くないもんな」
「え?」
「知らなかった?」
「知らなかった」

 そっかと呟くとそれ以上詮索しなかった湊人くんに甘えて黙って考え込んでた。

 雅ちゃんの家は、母親が立ち上げた会社の権利を結婚した父親が全て持っている。そして雅ちゃんはひとりっ子だから、会社を継がないといけない。

 けれど、女性には継げないだろうという無言の圧力を父親からかけられてるらしい。だから、結婚していい奥さんになれと。

 全て雅ちゃんの口から聞いたものだけどこれが今も続いているかはわからない。けど、今の表情を見る限り今も続いているらしい。

「蒼、俺たちがとやかく言うことじゃない」
「うん。そうだね湊人」

 湊人はいつも僕の考えを読み取るのが上手い。そして、僕のストッパーになってくれる。

「じゃあ、片付けして帰るぞ」
「はあい」

 そう言って立った湊人くんについて一緒に片付ける。お皿を綺麗にするための水が、意味もなく流れた。