———————だけど、まだ、しにたくない!!!!!!
下の階まで、抱きしめられたまま階段を転げ落ち切った。
わたしたちは、ぎゅっと強くつむっていた眼をふたり同時に開いて。
そして、ぱちり。
ものすごく近い距離で、視線と視線がまっすぐにぶつかって。
「~~~~っっっ、」
痛みに悶えるように、形の整った眉がぎゅっと寄せられる。
色素の薄いガラス玉みたいに綺麗な瞳が、苦痛と怒りと恨みを込めてこちらを睨みつけた。
「確認なんだけど、」
「はい」
「おれ、生きてる?」
「…………おそらく」
階段を転がり落ちたわりに、わたしには大きな負傷がないようだ。
これは、完全に、三好くんが庇ってくれたおかげである。
「だ、だいじょうぶですか」
「なわけ、ないだろ」
「デスヨネ」
「軽く走馬灯みえたし」
誰かに見られたら勘違いされそうな状態のまま、わたしたちは会話を続けていた。
これはもはや、現実逃避の一種である。
でも、とりあえず。
「俺のことを、病院に連れていけ」
17歳の夏休みまで、あと半日。
わたしは、大きく頷いた。
最悪で最高の、アツい夏が始まろうとしているけれど。
そんな悠長なこと、言ってる場合じゃないのです。



