なんとなく、お喋りが止む。
その場にいるみんながひとり残らず同じように、華やかな空を見上げていた。
1輪、1輪、咲いては落ちていく。
花火が1発ひらくたびに、あつかった夏の記憶がひとつずつ。
あたまの裏側で再生される。
ひゅるり、終業式の告白現場。
ひゅるり、ふたりで転がり落ちた東階段。
ひゅるり、無意味なギプスと白い病室。
ひゅるり、ヒマワリとサッカーボールと峰くん。
ひゅるり、立派な三好邸のお昼ごはん。
ひゅるり、キス。
ひゅるり、三好くんとの会話。
ひゅるり、ひゅるり、ひゅるり。
今夜は、2万発の花火が打ち上げられるらしい。
それでも、たった数十日の夏の思い出をぜんぶ描きだすには、ぜんぜん足りない。
わたしは、お面が外されてあらわになった、整った横顔を盗み見た。光の赤色に照らされて、すごくきれいだ。
みんなが、空を見上げている。
わたしひとりだけが違う向きで、三好くんを見つめていた。



