そわそわしながら、混雑した駅に着く。人の流れに飲み込まれそうになりながらも、なんとか、三好くんを発見した。


だいぶ距離がある場所から見つけてしまったので、向こうはわたしに気づいていない。

その一方通行の距離感に、なんだかノスタルジックを感じてしまって、そっと夏の空気を吸い込んだ。

先に駅で待っていてくれた三好くんは、グレーの浴衣をゆるりと着ていた。

涼しげに整ったあまい容姿と相性がよくて、あまりの尊さに胸がくるしくなる。


2枚だけ隠し撮りをすませてから、きょろきょろとわたしを探している三好くんのところに歩いていく。駆け寄りたくなっちゃうけど、おしとやかを心がけた。



「じゃん!浴衣ありがとうございました!」



濃紺のそれをお披露目して、頭を下げる。


ちなみに、夏の星座が描かれている。ふつう、そこはヒマワリじゃない?とおもったけど、三好くんは星が好きだから仕方ない。

三好くんが好きなものを身につけられることのほうが、ときめき度数は高い気がするし。


なんて考えているわたしを前にして、三好くんは声も出さずに口をはくはくさせていた。



「〜〜〜っ、くぁ、」

「くあ?」

「くあ、あ、か、かかかかわいいです、、、」



ぷしゅううう、と浮き輪から空気が抜けていくみたいにデクレッシェンドしていってるけど。

だけど、かわいいというお褒めの言葉がしっかり耳に届いたので、わたしはすっごくご機嫌になった。


それから、「ごめんなさい、待たせちゃいましたか?」「んーん、おれもいま来たところ」というデートのお手本みたいな会話をしたのがくすぐったくて、ふたりでわらった。