三好くんのお屋敷に通わなくなった日々は、だいぶ退屈で物足りない、これまで通りの日常だった。
たしかに、めちゃくちゃ落ち込んだりもしたけれど、2日も経てば回復した。
だって、それまでお話しできたこともなかった王子様と、けっこう親しくなれたんだもん。ひと夏の夢だと思えば、わるくない。
そうやって、思い込むことにした。
たまに、ほんものの夏の大三角形を見つけると、三好くんの部屋のクッションがまぶたの裏側に映し出された。
そういうときは、ふと、有名な小説の一節を思い出す。
『別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。』
それでいうなら、星は卑怯だ。そこに三好くんがいなくても、星を見つけたら、あなたのことを思い出さずにはいられない。
さらには、あなたも同じ星を見てるといいなあ、なんて願ったりしてみるのだ。
わたしは、心のどこかで確信していた。
三好くんは必ず、花火大会に誘ってくる。