三好くんの仰せのままに



指定されたカラオケにいくと、まあまあの数の男女がわいわいと盛り上がっていた。

なかには制服の子もいて、学校帰りなのか、もしかしたらみゃーこに会ってきたのかもしれないな?と勝手に羨ましくなって、脳内でじぶんをぶん殴った。



「まれくん〜!」

「久々だけど、相変わらずかっこいいな〜」

「怪我してたんだよね?だいじょうぶだった?」

「日焼けしなすぎ!」



遅れて参加したので、みんなの注目が一斉に集まる。

へらりと薄くわらって、「俺のことはいいから、つづけて」と促した。


たくさんの瞳に、じぶんが映されている。

それなのに、みゃーこの瞳はここに無い。



「稀くん、空いてる日ある?」


隣にすべり込んできた女の子が、頭のてっぺんで束ねたポニーテールを揺らしながら、俺に話しかけてきた。

その髪型に見覚えがあって、べつの女の子を投影してしまう。情けないけど。


「んー、どうだっけ」

「遊びにいかない?ふたりで」

「考えとく」


誘われるのなんて、もう慣れてる。かわすのも、じょうずなほうだ。

だけど、誘うほうには慣れてなくて、すごくへたくそに花火大会を誘った記憶がある。思い出すだけでも恥ずかしくて、またタイムマシンが欲しくなった。


みゃーこのことになると、何ひとつ思い通りにいかない。にがい思い出ばっかりなのに、どれも大切に保存しておきたい。

たぶん、みゃーこなんて近くにいないほうがいい。


いま、この空間にいる俺はかっこよくて、やさしくて、人気者で、頭もよくて運動もできる。


そんな、きらきらした俺だから、みゃーこは拝んでくれるのだ。



高い位置からくるんと伸びたポニーテールがかわいかったし、メイド服もすごくかわいかったし。

ふざけて「わん」っておてするみゃーこも、俺を面倒くさそうに見てくるみゃーこも、晴れの日のみゃーこも雨の日のみゃーこも。


ぜんぶ、すっごくかわいかったのに、俺はそれだけのことがちっとも伝えられなくて。


そんな、不器用でへたくそで拗ねてばっかりの俺なんて、みゃーこの好きな〝三好くん〟じゃない。



だからやっぱり、離れたほうがいい。

みゃーこの近くにいると、俺は、みゃーこが好きでいてくれる俺を保てない。



「稀くん、なんか歌ってよ」



正直、あんまり気が乗らない。でも、ここで俺が歌わなかったら、うっすらと空気がわるくなる。


俺はふわっと微笑んで、マイクを受けとった。


ほんとは、重たい失恋ソングを熱唱したい気分だったけど、俺は人気の定番曲を選んで、仲の良い男友だちとふたりで歌った。


うまくやれてるじぶんが、どうしようもなく滑稽だ。