「おい、みゃーこ」
「なんでしょう」
わたしのなむなむに慣れたらしく、とくにそれについて触れることもせず。
三好くんが、えらそうな声でわたしを呼んだ。
あんまりかっこよくないし、大人っぽくもないけれど、この、ちょっと照れ臭そうなご主人様の音がいちばん好きだ。
「夏休みの最終日に、花火大会があるらしい」
「ほう、いいですね」
「それに、行く」
「ほう、いいですね」
「いいだろう、うらやましいか」
「まあ、はい、いいですね」
わたしは、三好くんの話ならなんだって聞きたい、強火なご主人様のオタクだけれど。
さすがにこれはなんの話だ?
話の芯が食えないまま、てきとうな相槌を打っておく。これが、よいメイドの仕事です。
「いっしょに行ってあげてもよいぞ」
背の高い三好くんがわたしを見下ろして、もはや殿様みたいな口調で話す。
、、、って。
「はい??」
びっくりして聞き返すと、彼はいらいらしたように「花火大会だよ、ばか!」と声のボリュームをひとつ上げてきた。
「みゃーこがどうしても行きたいって言うなら、ご主人様が連れていってあげよう」
「いや、言ってませんけど」
「〜〜〜っ、ああ、もう、ばか!!!」
それから、また、さらにひとつボリュームを上げて、わたしにきれいなひとさし指を突きつけて。
「俺と、花火大会に行け!これは命令だ!」
、、、そんな、挑戦状を叩きつけるテンションで言われても。
と、思ったけど。
なんだか知らないうちに、夏休みの最終日は、三好くんとの花火大会に行ける話になっていた。
最高な夏が、改めて約束されたみたいだ。



