「えーっと、おれは、」

「だめかな?!わたし、ずっと、好きだったんだよ?!」

「あ、だめ、というか、」

「だめじゃないなら、いいでしょ?!」



そして、三好くん。美少女の圧に押されまくっている。


身を潜めているのでふたりの様子は見えないけれど、とりあえず、アツアツな両想いではなさそうなので安心する。


そんな、不安と安心にこころが疲れてきているわたしのことなど、当たり前に知るよしもなく。


離れた場所で聞いていても、最高にあまい声を空気に溶かしてきた。



「おれね、つきあう女の子は、じぶんから好きになった子って決めてるんだ」



~~~~っくうううう!

ききましたか、この発言!!


一生ついていきます!きょうも生きていてくれてありがとうございます!この世でいちばんかっこいいです!ついでに、わたしと結婚してください!!!!


わたし同様にずっきゅんとハートの真ん中を射抜かれたであろう美少女も、「~~す、すきです!」と可愛らしい愛を吐き捨てて駆けだしてしまった。


言い逃げ史上、もっともかわいいのではないだろうか。学年1の美少女という栄冠を授かるだけある。



ぱたぱたと上履きの足音が遠くに去っていくのを聞き終えると、わたしの激しい鼓動以外には無音の空間が訪れた。


なんだか、すごい現場に遭遇してしまった。

あとは、三好くんがこの場を立ち去ったら、わたしもこっそり教室に戻ろう。


7月も終わりかけ、日陰の廊下でさえもなかなか暑くて。

こんなところにずっと立っていたら、熱中症になっちゃいそう。


そういえば、天気予報でも赤いお日様マークが並んでいた。

ことしの夏は、例年よりも暑くなるらしい。



たしかに、なんだか顔があついな、なんて—————






「盗み聞きとは、いい趣味してるね?」






——————浮かれている場合じゃない。