三好くんの仰せのままに


わたしは、めちゃくちゃ光栄なことに、三好くんの専属メイドだ。

これ以上、なにを望むというの。



「わたし、もっと、よいメイドさんになれるようにがんばります」

「よいメイド?」

「そうです。三好くんの仰せのままに、です」



だから、キスのことはまるっと忘れちゃおう。


よけいな期待もしなくていいし、そのことばっかり考えてしまって電車を乗り過ごすこともなくなる。今日はミスもひどかったし、ぜんぶ、キスのせいだ。


そう決めたら、なんだか、こころが楽になった。

よいメイドになれそうだ。



「なんか、みゃーこ、清々しくなってない?」

「邪念を振り払ったのです」

「ふうん、それはうらやましい」

「三好くん、邪念だらけなのですか?」

「うん、邪念だらけだよ。だって俺、男子高校生だもん」



曖昧なことしか言わないので、わたしはとりあえず両手を合わせて拝んでおいた。

三好くんの邪念が振り払われますように。なむなむ。