三好くんの仰せのままに



だいぶ控えめになった白いギプスが、わたしたちのおわりの合図を鳴らそうとしている。


はやく、治ってほしい。
ずっと、治らないでほしい。



ただの三好くんオタクとしては、彼の痛みなんていちにちでも早くどこか遠くに飛んでいってほしい。


だけど、その痛みだけが、わたしたちを繋いでいるとわかっているからくるしいのだ。






「みゃーこ、おいで」



どうして、そんなにも、あまい音でわたしを呼ぶの。

どうして、あんなふうに、キスなんてしたの。



いつもは、すこし離れた場所で見張りのようにしずかに立っている峰くんが、きょうはすんなりと部屋を出ていった。


このわたしが、三好くんの魔力に逆らうことなんてできるはずもなく、ふらふらと吸い寄せられるように彼のところに歩み寄る。



まだ、夏休みは半分くらい、宿題はほとんど残っている。わたしたちが過ごした時間は、たったの2週間とちょっとだけ。


それなのに、三好くんはほんのりと背が伸びたような気がしなくもないし、なんとなく、纏う空気の色が変わった。



変身のきっかけを知りたいような、知りたくないような。


髪の毛を染めたり、日焼けしたり、そんなあからさまな変身じゃない。むしろ髪と白い肌だけがそのままで、髪には雨による柔らかい癖がついている。



「峰と、よく話してるね」



ずっと近くで聞いてみたいと思っていた声が、当たり前みたいにわたしに話しかけている。

こんなふうに、赤い怒りを滲ませるなんて、しらなかったことだ。



「えっと、すみません、お仕事の邪魔はしてないつもりです」

「惜しいね、俺が怒ってるところまでは分かったんだ?」