星空柄のカーテンが閉めきられていて、三好くんの部屋は夜空が広がっている。

普段は明るいので気づかなかったけれど、暗闇で光る惑星のシールが貼られているらしく、宇宙空間になっていた。



「部屋、真っ暗ですね」

「きょうの午後は、ホラー映画を観る」



真夏の昼下がり。外は太陽が眩しいというのに、この部屋にはほとんど光の差し込んでいない。怪しく思うと、なるほど、映画館になっていたらしい。


ソファの前の壁には、とびきり大きなスクリーンが映し出されている。



「わたしもですか?」

「もちろん、みゃーこもいっしょに観る」

「わたし、ホラーは苦手なのですが」

「暑い夏には背筋からひんやりしたいだろ」


三好くんの不機嫌にも慣れてきたので、もう、気にしないふりをして、彼のところに歩み寄る。


ていうか、わたし、別にひんやりしたくないんですけど。


反抗的な視線を送ると、彼はぽんぽんとじぶんの座る左隣を叩いて、わたしにも座るように促した。



「ひんやりしろ、これは命令」

「じゃあ、三好くん、隣にいてくださいね?」

「いいよ、おてても繋いであげようか」

「え!いいんですか?」



三好くんとおててを繋げるチャンスなんて、この先の人生、無いと思う。冗談の口調だとわかっていたけど、しっかり言葉尻を捕まえた。


「え?」

「手、つないでくれるんですか?」


きょとんと固まる三好くんに、わたしの右手を差し出してみせると。



「ば、ばばばか!ばか!うるさい!だまれ!」



ものすごい勢いで、バズーカみたいな言葉の弾が放たれた。


さすがに、調子に乗りすぎたみたいだ。めちゃくちゃ怒られてしまって、しゅんとしちゃう。


そこまで言わなくても、と思ってくちびるを尖らせると。

こんどはわたしの機嫌を伺うように、好みど真ん中の整ったお顔が覗き込んできた。



「ごめん、みゃーこ」



どうやら、言いすぎてしまったとすぐに反省したらしい。めずらしく素直に謝ってきたご主人様が、なんだか可笑しい。

おもわず吹き出してしまって、わたしがまったく怒っても傷ついてもないことに気付いた三好くんもつられて笑った。