ざーざーと音を鳴らして、地面を叩く強い雨。
さすがに、学校の花壇が心配になる。
三好くんも家まで送るって言い出してくれたのだけど、なんたってご主人様なので、そこは丁重にお断りした。
「俺も、乗る」
「いやいや、それは申し訳ないです」
「送ってもらうことには遠慮しないくせに、俺には遠慮するのかよ」
「そ、それは、まあ、図々しいのも承知のうえですけれども、三好くんは三好くんですもん!遠慮というか、わたしなんかのために、そんな、すこしでも、雨に打たれてほしくないのですよ!」
「俺、雨に打たれてもへーきだし」
「だめです、お風邪ひいちゃいます!夏風邪はタイヘンなんですよ!」
というような不毛な議論を10分くらい繰り広げて、なんの打開策なのか、峰くんが「じゃあ、俺が園田送っていくよ」と爽やかに言い放った。
こういう要領の良さは、クラスメイトの峰くんと同一人物で間違いないのだ。生き別れた双子とかじゃない。まあ、生き別れてなくてもいいけど。
三好くんは、いつにも増してご機嫌斜めだったけど、彼は怪我人だ。怪我人王子様だ。お風邪をひかせるわけにはいかない。
そう説得して、わたしと峰くんは、運転手さんつきの白いぴかぴかした高級車に乗り込んだ。三好くんは納得しなくて、お見送りもしてくれなかった。



