それから、わたしは、三好邸に仕えるメイドさんたちとお揃いの制服に着替えた。


萌え萌えきゅんなフリルたっぷりのドレスではなかったけど、黒いワンピースに白いエプロン、深みのある緑が、リボンなどの差し色に使われていてとってもかわいい。


この、おしゃれなメイド服は、どうやら世界的ファッションデザイナーのルリ・ミヨシがデザインしたものらしい。ちなみに、三好ルリは、三好くんのおばあ様である。


『Dear M』という名前の高級ブティックを経営しているのが、この大豪邸を構える三好一族だ。日本ではもちろん、おしゃれの都であるパリやニューヨークでも人気がある。



そんなわけなので、どんな女の子が着ても可愛くなってしまう最高のメイド服に袖を通して。



「ご主人様、なにか命令してください!」



きらきらと光を纏ったまま読書をしている三好くんに駆け寄ると、彼は驚いたようにわたしをじっと見つめたまま固まってしまった。


みよしくん?と呼びかけると、ハッと我に返ったように彼がわたしをまっすぐに見据える。



「命令したら、なんでもしてくれるの」

「わたしにできることでしたら?」

「〜〜っ、ほんとに、ばか」







ことしの夏休みは、学校の花壇に水遣りと、宿題と、三好くんの3本柱だ。



あしたも晴れますように!

そして、あしたも、三好くんが元気で過ごしてくれますように!



濃紺に縫いつけられた夏の大三角形に向かって、わたしは手を合わせてお祈りした。


なむなむ、あしたも良い日になりますように。