暑そうな昼休みのグラウンド。
ひとりの女の子が三好くんに駆け寄って、飲み物らしきものを渡しているのが見えた。
それを受け取った三好くんも、優しいお礼をしているみたいだ。
そういうの、うらやましいと思ったことがない、わけでは、ない、けどさ。
「どうせなら、都も近くに行けばいいじゃん」
わたしの野望をあっさりと言葉にしたランちゃんに、ぶんぶん首を振って否定した。
「いや、むりむり、まぶしさで目がしぬ!サングラスしなきゃ直視できない!」
「なんで?」
「あんな近くで三好くんを見つめられるのは、かわいい子だけの特権だもん」
もごもごと言い訳するわたしを、ランちゃんは「顔だけなら、都がいちばんかわいーよ」となぐさめてくれた。
三好くんは、みんなの王子様。
平凡な町娘のひとりが彼に見初めてもらえるなんて、おとぎ話でもあるまいし。
シンデレラみたいに意地悪な母親や姉にいじめられてもないし、ていうか、うちにいるのは姉じゃなくてお兄ちゃんだし。
したがって、わたしと三好くんは、同じ高校の生徒兼、推す側と推される側の関係でしかない。
—————はず、だった。



