さすがに頭が追いつかなくて、ていうか、三好くんと出会ってから、予想外のことばかり起きている。もう、じつは三好くんが月から遊びにきた王子様だとしても驚かない。

ていうか、その可能性もある気がしてきた。かぐや姫っぽいし。

「峰、なんか飲みもの用意して」

「すでに、稀さまのお部屋のほうに冷たいハーブティーをお持ちいたしますね。園田さまのぶんもございますので、ぜひ」


ふたりはもうすっかり慣れ親しんだ間柄らしく、動揺しまくるわたしを置き去りに会話をすすめる。


高校生の峰くんがどうして執事なんてやってるのか知らないけど、しかもその相手がどうして三好くんなのかも分からないけど。


でも、とりあえず、ひとつだけ言いたい。



「あの、わたしも、きょうから三好くんのメイドになるからさ、」

「はい、同僚ですね」

「そう、だから、園田さま、はやめてくれないかな?恥ずかしいし」



こっそり告げると、執事峰くんはくすっと品良く笑って「承知し───てか、オッケー」と口調を崩して了承してくれた。


学校での峰くんとは笑い方もぜんぜん違うけど、ところどころに爽やかが滲み出ている。


ヒマワリ少年との激しいギャップに、ぽけーっと見惚れていると、使用人たちのやり取りを黙って見ていた王子さまがくちびるを尖らせた。



「職場内恋愛は禁止だぞ」

「はい?」

「ばか、うるさい」



理不尽極まりないのだけど、そんなのとっくに峰くんは慣れているらしい。黙って、ひとり先に、お茶の用意に向かってしまった。


どうやら、わたしに言われているらしい。