歩きだした彼のやや後ろについて、お礼をすると、「みゃーこだって、来てくれただろ」とぶっきらぼうな声が返ってきた。
わたしは、三好くんに怪我させちゃったから、来るのが当たり前だもん。そう思ったけど、それは言わなかった。
たぶんだけど、学校で見せる柔らかい雰囲気の三好くんも含めて、このひと、けっこう不器用さんだ。
器用そうに見せすぎちゃうのだろう。
かわいいなあ、どこまで沼に落とせば気がすむの。
「三好くん、みゃーこはメイドです」
すぐ目の前にある背中に向かって宣言すると、「うん?」と振り返ってくれた。
あまく整ったお顔立ちがいきなり間近に現れて、どきどきする。
「だから、なんでも言ってくださいね?」
「なんでも?嫌だよそんなの」
「じゃあ、わたしは、三好くんが言わなくてもなんでもわかるようにがんばります!」
そんな会話をしていると、ようやく三好邸の玄関にたどり着いた。途中で見えた噴水、サイダーだったのか確認するの忘れてた。
すると、立派な扉がひとりでに開かれて。
「園田さま、ようこそいらっしゃいました」
ずらーっと使用人さんたちが並んでいることはなかったけど(なくてよかったけど)、黒いスーツを着た美少年が丁寧なお辞儀をして待っていた。
──────美少年????
「み、みみ峰くん?!」
豪華なシャンデリアのもとで上品に立っているのは、わたしが下校するあたりまでは爽やかサッカー部でボールを追いかけていたはずの彼だった。
って、えええええ?!?!
思わず、瞬きの回数が増えてしまう。
「改めまして、三好稀の執事をしております、峰(みね)です」
ついさっき、クラスメイトとして会話をしていた人気者が、うやうやしくわたしに頭を下げている。



