そうして、ナビ通りの10時45分。
わたしは、堂々とそびえ立つ、三好邸の正門前に訪れていた。
まず、ここに辿り着いて抱いた感想としては「やっぱり三好くんは王子さまで間違いなかった」ということだ。
で、その次に、「天気予報と星座占いはよく外れるけど、ナビの到着予定時間はけっこう当たる」だ。うっかりどうでもいいことを考えちゃうのは、わたしの悪い癖である。
目の前にあるのは、西洋の古き良きお城と、最新のタワーマンションをいいとこ取りしたような大豪邸だ。三好邸だけで、マンションと同じくらいの敷地面積を有している。
開く様子のない大きすぎる門の前で、わたしは立ち尽くしてしまう。とりあえず、三好くんに連絡してみようか、と思ったとき。
ゆっくりと門がこちら側に向かって開いて、その奥に、腕にギプスをはめた王子が現れた。
「暑い」
そして、短く文句を吐いた。駅から歩いてきたので、それを言いたいのはわたしのほうだ。でも、まあ、三好くんならゆるすけど。
夏休みに見る三好くんは、別格のかっこよさだと知った。
半袖のブラウンの開襟シャツは、シンプルだけど生地がてろんとしていて高級そうだ。ゆるっとした黒いズボンと、夏休みらしいサンダルが涼しげでよい。
見苦しいのは、ぐるぐるに巻かれたギプスだけ。
お城みたいなお屋敷を背景にしても、圧倒的なきらめきを纏っている三好くんは、猛暑がうざったいらしく、ゆるりと目を細めた。
はー、眼福。
三好くんと過ごす、毎秒、毎場面がわたしにとっては最高の瞬間だ。こころのシャッターをきって、脳内フィルムに保存です。
「おはようございます、お怪我の具合はどうですか」
「そんなのいいから、はやく家の中はいろ」
「暑いなか、わざわざ門まで来てくれてありがとうございます」
この大豪邸は、ホテルみたいに、玄関から門までの距離がまあまあ遠く見える。



