「たしかに三好くんはかっこいい、けどね」
「かっこいいなんてものじゃないよ、きらきらと生きる奇跡だよ、生きていてくれてありがとうございますだよ」
「うん、でもね、都(みやこ)」
「ん?」
「三好くんを見つけるたびに、拝むのはやめてくれない?」
夏の日差しが降り注ぐ校庭では、数人の男子生徒たちがサッカーを楽しんでいらっしゃる。
いかにも明るい人気者ですって雰囲気の彼らのなかでも、一際輝いているのが三好稀(みよしまれ)くんだ。
その光景を、教室の窓から眺めながら手のひらを合わせてなむなむ拝んでいると、ランちゃんが迷惑そうにわたしを見てきた。
「ごめんね、それは大の仲良しなランちゃんでも無理なお願いだよ。だって、三好くん、いや、三好さまを前にしたら人類みな無力なんだから」
「隣にいて恥ずかしいのよ」
「わ~!三好さまゴール決めた!まって、かっこよすぎ、尊い、愛、なむなむ、」
「うん、きいてる?」
小さく拍手を送るけど、もちろんグラウンドには届かない。
ていうか、もうすでにそこには三好稀ファンの女の子たちがたくさんいて、きゃーっとソプラノの声援を響かせている。
2階の教室からぱちぱち鳴らしてみせたって、当然あなたに届くはずもないのだ。
でも、わたしにはこの距離がちょうどいい。
星座占い1位の日には手を振ってもらえたりするような、あんな近いところで三好くんを見ちゃったら。
なんかもう、心臓もあたまもパンクしちゃいそう。
そういえば今日のわたし、星座占い何位だっけ。



