「でも、わたし、どうしたらいいんですか」
白いベッドの傍に立って、わたしの好みど真ん中に整った顔立ちを見つめる。
この国宝級のお顔に傷ができなくて、ほんとうによかった。
わたしのせいで三好くんが海賊みたいな傷をつくったら、え、まって、そんなワイルド三好くんもなかなかにオツなのでは?
三好くんがわざとらしく痛そうに顔をゆがめてみせる。
いや、痛いんだろうけどさ。包帯でぐるぐるに巻かれた腕は、もはや腕じゃない。じゃあ何って聞かれても知らないけど。
そうして、その怪我を存分に見せびらかして、わたしを試してくる。
「なんでもする?」
「な、なんでもします」
「あんまり、そーいうの気軽に言わないほうがいいよ」
「気軽じゃないです、三好くんの頼みだったらなんだって頑張りたい所存であります」
でもね、こっちは本気だし。
三好くんに傷を負わせたというのはたいへん重たい罪なので、わたし自身で償わせていただきたい。
とはいえ、三好稀さまの右腕と夏休み。そんな貴重なものと釣り合うものなんて、わたしにあるかな。
「そうだなあ、」
傷のないなめらかな白い頬をぽわんと見つめていると、あまい色をした瞳が覗き込んできた。
うっわ、かっこよすぎてびっくりしちゃう。
少し悩ましげだった仰げば尊し三好くんが、何かひらめいたらしく、意地悪そうに微笑んだ。
にやり。
レア度星5つな推しの表情に、思わず見惚れてしまえば、もう。
「俺に捧げろよ、オマエの高2の夏休み」
そういえば今日、星座占いは12位だった。
占いと天気予報って、どっちのほうがよく当たるのかな。
現実から逃避行する脳内は宇宙、だけど視線は王子にくぎづけにされていた。
「俺の腕が治るまで—————三好稀(みよしまれ)の専属メイドに任命します」



