大病院の白い個室で、ふたりきり。白いカーテンの向こう側は、ようやく太陽が傾いてきた。
夏の陽は長い。
わたしは、三好くんのファンやお友だちが帰っていった頃を見計らって、お見舞いに来た。
わたしの姿を見るなり「おせえよ」と怪我人は吠えたけれども。
お見舞いの品々らしきドーナツやらジュースやらが置かれていて、やっぱり人気者なんだなあと再確認させられる。
なんだか、わけが分からなくなるくらい、今日いちにちで距離が縮んだような気分になってしまった。
だけど、やっぱり、三好くんとわたしには壁がある。
でも、それが正しい。
三好くんは、推される側。
わたしはこっそりと拝んで推す側。
それ以上でもそれ以下でもない、一方的な関係性。
ごめんなさいの気持ちを込めて買ってきた、夏色のかわいい花束。
それを背中に隠して、わたしは彼の言葉をきく。
「で、そのアツい青春を、オマエは俺から奪ったの」
やさしい王子様の三好くんではないけれど、これもこれで三好くんだ。
ちょっとSっぽいのもわるくないし、拗ねてるみたいなくちびるがかわいい。
三好くんは、生きてるだけで最高に尊いのです。
それに、わたしのために選んでくれる言葉なら、なんだって。
ありがたくなっちゃうよ。



