鬼畜執事のキング

次の日、昨日考え付いた(いい案)とやらを持って、学校へ向った。
迎えにきてくれた空にはまだ内緒。
こっそり、隠しもったソレ。
ワクワク♪ 
キンコンカンコン♪
お昼休みを告げる鐘が鳴る。
「よっしゃ!♪」 元気よく席をたち、まずはりかちゃんの元へ。
「なにそんなにハラペコ?」 あまりの勢いで行ったもんだから、そう、りかちゃんに突っ込まれた。
「違うし! 今日、お昼一緒できないからごめんって言いに来たの。」
「ん?ああ、ダーリンと食べるんだ~?二ヤッ♪」
「う//」 この頃、りかちゃんのお譲イメージが崩れてく頻度が増したよ~な・・
「私、今日は外食するから、気にしないでゆっくりラブってきてねん♪」
と、手をヒラヒラさせ、教室から出ていってしまったっ
外・・外食かぁ・・やっぱ、イメージは崩れつつあるものの、ホンマもんのお譲はやることが違うぜ!
ハッ!と、そんなことより!!!
「そぉ・・っじゃなかった!相馬くん」
バッと振り向いて、空の方を向くと、ポカンとした顔して私を見てる。
「?どうかした?」席に近づいて、そう聞くと、
「・・いや、呼ばれるとは思ってなかったから、驚いた。」
と、少し戸惑ってる。
? へんなの。呼んじゃダメなのかよ?
・・・まぁ、いいや。
「お昼ご飯一緒に食べよ♪」
「え?・・あぁ。」
「お弁当持ったきた?」
「・・ん、購買でなんか買ってくる。」
よし!
「今日は、買わないでいいから♪ふふ♪」
「?」
「裏庭へ行こ♪」
あそこなら人気も少ないし~
戸惑う空の手を引いて、私は隠しもったソレとともに教室を出た。

裏庭に着くと、やっぱりソコは閑散としてて、
明るい中庭とは違い、日陰だらけの裏庭は人気がない。
まぁ、隠し事してる私たちにはその方が都合いいんだけどね。
空は相変わらず、校舎の壁へともたれかかかって座り込む。
私も、すかさず、その横に座り込んだ。
「で?」
「え?」
「なんだよ、急に。昼、一緒に食べようなんて。」
「ダメ・・だった?」
「・・いや。」
? 
なんだよ?
あ、そんなことよりっ!
「じゃーん♪」
今まで隠し持っていたソレを膝の上で開けて見せた!
「!」
ソレ、つまりお弁当~~♪
今朝、ママにも手伝ってもらって作ったのだ!!
なわぁんと!初!手作りっ!!(味は大丈夫かっ!?
ん?
「空?」
開いたお弁当を見て固まってしまってる。 ??
えっ?もしかしてまずそうなのかな?
キライなものばっかだったのかなっ??
「あ、あの、空の嫌いなものわかんなくって、その、食べられないものあったら・・のこし・・」
「コレ、全部食っていいの?」  いきなり、そんな風に聞いてきた。
「え、あ、うん。もちろん。」
「食う。」
ガバッと、膝からお弁当箱を掴んで、食べ始める空。
ガッ ガッ  ガッ  ガッ
・・・え~・・っと・・
その光景に呆気にとられてると、空の箸の動きが急にぴたっと止まった。
「?」
「美未香は食わねーの?」 チラッと横目で見ながら、そう言ってくる。
「あ、ぁあ、そうだった!」
空のあまりにも意外な動作に我を忘れて見入ってしまってた私は、その指摘にハッと
気付き、慌てて自分のお弁当箱を取り出した。
それを開けて、さて、食べましょう!と思った時、
なにやら視線を感じる・・・
「げ!」
ソレは隣からで、
つまり空の視線で、
私のお弁当箱の中の何かをじっと見つめてる!
「そ、空?もう食べ終わったの?」 見られると食べにくいったら!
「うん。」
「もしかして、まだ、食べたりない?」 あー食べにくい!
「うん。」  なにをぉ!?
「コレも食べる?」 私の分がぁぁぁ~~
「うん。」  頷くのか!どんだけハラペコなんだい!!
「じゃ、はい」 ギュルルと鳴る腹を抑えて、お弁当を空の方へ差し出すと、
「♪」 それはそれは嬉しそうな顔を向けてきやがってるっつ///
く!
かっ・・
可愛いじゃねぇか~~~~~~~~~~~~~~~~っっつ!!!!//////
そ、そんな顔してぇっ!!!ずるいっ!!
んな顔されると、私のハラペコなんてどーでもよくなっちゃうじゃん///もぉ!!
すっごく嬉しそうな顔をした空は、そのお弁当は受け取らずに、じっとこっちを見てるだけ。

「空、いいよ、食べても。」 そういい足すと、
「食べさせて。」 と、口をあーんと開けるっ!開けやがる!!!
「○X△□~~~~~~~///////////////!!!」
なっ、なに!なになにぅぉ!!!/////
「その卵焼きだけでいいから♪」
なにをなにをなにをぉぉぉぉぉぉっつ!! /////
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキッ////////
「早く!」 そんなに早く食いたいのかっ、我慢の限界なのかっ!空の口調が強くなった!
「うわぁ!はいっ///」 
ガチガチ ドキドキ  震える箸で、卵焼きを掴むと、空の口まで運んだ。
開かれた口へ、それを持っていくと、
パクッと、一口で飲まれたっつ!!!
ひっ!! 
「ごちそーさま♪」
へっ?  
両手を合わせて、満面の笑顔を浮かべる空。
・・・・・・
「あ・・の・・」  気になる。
「ん?」
「その・・」  気になる。
「?」
「お、・・美味しかった・・?」  感想が。
「うん♪」 またも爆殺笑顔でいいやがったっ!!!///// クラクラッ///
「早く食え!」 今の愛らしい顔と声はどこ行ったんだい??ってぐらい、相変わらずの命令口調で空はそう言い放つと、スッと立ち上がってどこかへ行ってしまった。
「?」
なんだ?もう満腹だからココに居る必要性なくなったってことかい?あとは用なしってか!?
ちっ!行動が獣過ぎててついて行けんわ!
・・・・
・・・だけど・・
空の
あの・・嬉しそうな顔・・
・・・美味しかったって・・
・・へへ////

良かった・・♪


1人でそんな事を思いながら、ニマニマしてお弁当を食べていると、
ポン!
頭の上になにか置かれた。
ひんやり~
「え?」 上を向くと、そこには空がいつの間にか立っていて、
私の頭のに置いたものを、今度は頬にくっつけてきた!
「わっ冷たっ!」
そのひんやり冷たいものの正体はパックのリンゴジュースで、
「飲みモン、いるだろ?」
と、ニッコリ笑って、それを手渡してくれた。
「あ・・りがと。」
「おう」
空の手には缶コーヒーが握られてて、壁のいもたれかかってソレを飲み干してる。
そっか・・これ買いに行ってくれてたんだ。
意外と・・
「いいトコあんじゃん♪」 ストローを差込みながら、ニッコと笑った。
「お前にだけね。・・ふ」
「ぅ//」 んな真顔で、こ、こんなトコでソレ言ってのけれちゃうあんたってば、すげーよ!改めてすげーと思うよっ!!言われた私の方が赤面だよっ!!/////////
「・・弁当、サンキュな。」
赤面解除できないままの私に、ポソッと空がそんなことを言ってくる。
「ん/// お腹・・いっぱいになった?」 ちょっと照れる///
「ああ、すっげ」
「じゃ、今、幸せ?」
「ん。すげー幸せ♪」
あ・・///
「・・・・」
「ん?どうした?」
「昨日ね・・ママに言われたの。お腹すいてると笑顔じゃなくなるって、それだと【笑顔=幸せ】につながらないんだって。私も、ご飯を食べた時に実感したの。だから、空にも実感してほしかった。」
「!」
「それでお弁当作ってみたの。空にも、お腹いっぱいになってもらって、笑顔になってほしかった。」
「!」
「幸せになってほしかった。」
「!」
「まぁ・・私がつくらなくても、空んトコのママだって作ってくれるんだろーけど・・」
「・・いねぇよ。」
「・・え?」
「そんなんいねぇ」
え?
「親なんか居ねぇ、」
「―――!!」
ゆっくり顔を上げ、そういった空の言葉に、私は動けずにいた。
親が・・
居ない・・?
え・・?

ウソ・・

「俺の家は麗騎士のあの部屋だって言ったろ?」
あ・・
ニッと笑ったその顔は、ホントの笑顔とかじゃなくて、投げやりなカンジの顔で・・
「んなことより、」
へ?
んなこと?今のが、んなこと?
「今月末まで、店に来んな。」
「は?」 なんだ?ソレ??
思いっきり話題を変えられた!
「今月、稼がなきゃなんねぇかんな。少しハードになると思う。・・」
だから??なに?
「お前に来られると・・困る。」
「!!?」
「かまってやれねぇし。」
!! 別にかまってなんかほしかねーよ!
なんだい!結局、他の客とイチャイチャするから、私が居るとジャマだっつーことでしょ!
「ふーん、
わかった。」
ゴソゴソと、まだ食べかけのお弁当箱をしまいかける。
「・・・・・」
「ホントに、わかったのか?」
「・・・・・」 なにがだよ。わかってるよ!死んでもそんな場面見になんか行かねーし!
「はぁ・・」
「・・・・・」 ため息つきたいのはこっちだよ。
「まぁ、わかったんならいい。時間だ、そろそろ教室戻んぞ。」
気付けば、昼休みの時間が、あと、5分で終わろうとしている。
何も、返事もせずに、お弁当箱を2つ持つと、
そこから、立ち上がって、空の後について行った。
教室に向う途中、
前を向いた状態で、空が
「・・明日も、食わせてくれんの?」
と、聞いてくる。
「・・・わかんない。」
「・・そっか。」
すっきりとしない感情を抱えたままの私にとって、明るく「うん」とは言えるハズもなく、
そんな曖昧な言葉しか出てこない・・。
・・空が・・
悪いんだから・・ね。

授業が全て終わる頃、フッと空の席を見たが、既にそこには姿は無く。
は・・あいかわらずお早いご出勤ですこと。 と、嫌味の一つも呟きたくなる。
重い気持ちで、カバンの中へ、教科書を詰め込んでいると、
「今日行く?」 
と、りかちゃんが話しかけてきた。
「んー、ごめん。今、私、出入り禁止みたいで。」
「え?なにソレ?」
「・・空、お金いるから・・・・それで・・たぶん・・他のお客と仲良くとかするのに私が居るとジャマなんじゃないのかな・・」
はぁ・・わかってる。
そうしないと、稼げないもんね。 わかってる。
指名取らない分、どっかで客にサービスしないと、さすがにお店側だって給料だせないもんね。
うん・・わかってるよ
今月末、元カノに渡すんだって・・ソレが最後になるから多めに持っていくんだろーなって。
だから、いつも以上に働かなきゃなんないだろうってことも・・
・・・わかってる  ハズなのに、
はぁ・・
「あー、ソレはないない!」
「へ?」
「前もなんか、空、お金稼ぐって必死になってた時があったから。」
「え?」
「その時、裏方にまわって掃除とか雑用をしてたってリク言ってたよ?空の名で、イベントすればすぐに大金稼げるのに、わざわざ大変な裏の仕事の方を選んだんだって。」
「え・・掃除・・雑用?」
「そ!、もうヒマな時間なんて無いのに、よくやるなって、リクも言ってた。」
~~~~~~~??
うそ・・
あの鬼畜が裏方??
掃除だと??雑用だと??
「そんな姿、見られたくなかったんじゃないの?空、No.1なんだし。」
「!」 
あ・・そうなのかな・・ホントなのかなソレ。
「こ、今回は、違うかもしれない・・じゃない・・?」
小さくそう呟く私に、
「じゃ、こっそり、見に行く?」
「え?」 いや、それは・・
「確かめたいんでしょ?」  う・・そりゃ、・・
「大丈夫!絶対にバレない方法があるからっ♪」
なんと! 抜け道でも掘ってあるんですかっ??お嬢様っ!!
「いや・・たぶん、今美未香が思ってるよーなことは無いから。まずありえないからソレ。」
「!!」 がっ!!なんでわかるんだぁぁ!!空といい、りかちゃんといい
ち、超能力者じゃないのかっ!!
「まぁ、ウチにいらっしゃい♪ふふふ♪」
不適な笑みを浮かべたりかちゃんは、そう言うと、私の腕を掴んで、さっさと歩き出した。
い、いいのかっ!!
このまま、りかちゃんに身を預けてもっ!!
不安を抱きながらも、りかちゃんちへと向った。いや、無理やり、迎えの車へ押し込められて連れて行かれたっっ!!

相変わらずの、デカイ門!そこをお迎えの車ごと入っていくと、
ここはホテルですかっ?なみの玄関に横付けして止まる車。
ドアはお出迎えにきてくださったメイド服のお姉さまが慣れた手つきで開けてくれる。
はぁ~~~~~~~////やっぱ、りかちゃんってすごいお嬢なんだぁと実感させられる瞬間である。
≪自分ちでも、十分、執事いるのになんでわざわざ麗騎士に行くの?≫
と、前に聞いたことがある、
そのとき、りかちゃんが言った言葉は
≪ここの執事にイケメンいないもの≫ ・・だった。
あの時は、改めて・・りか様!と叫びたくなった(笑
そんな事を思い出しながら、無駄に長く広~~~い廊下を進んで行くと
見覚えのある白く大きな扉。
他の部屋の扉も同じだが、この部屋の扉だけは白さに加え、スワロフスキーのクリスタルが扉全体にちりばめられてて、存在感を増している。
そう、この扉を見ただけでもわかるゴージャス感のある、この部屋こそ、りか様の御部屋でござりまするのだっ!!
「ど~ぞ。」 その、お言葉に甘えて部屋へ入ると、
「わ!」 
「なによ?初めて入った訳でもないのに。くすくす♪」
「だ、だって・・」 鳴れねーよ!なん回入っても慣れねーよ。
こ、こんな・・
目いっぱいキラキラキラキラゴージャスな部屋になんかっ!
しかも、廊下同様・・無駄に広いし!!
「美未香~こっち来て座って~」
「?」 呼ばれるままに行くと、
そこには大きなドレッサーと、クローゼット・・。 と、もう1人・・スレンダーな女の人が
コテを片手に立っている。
「?」 
「正体・・バレないよーにしてあげる♪」
「へ・・」


それから・・約・・1時間
鏡の中に映し出されたものは・・
髪の色はもう少し明るめに変えられーの。くるくる巻かれーの。、メイクはふさふさつけまに琥珀色のカラコン入れられーの。
そして!仕上げの衣装!
黒のシックなマキシ丈ワンピを着せらーのの私は、
完璧、りかちゃんの言う正体バレナイように見事させられましたぁぁぁ!
すごい!大人っぽー///自分でもわかんなくなるくらいその変身ぶりは見事で。
「やっべ!マジこれ誰??ちょーキレイ♪」 自画自賛してしまう始末。
「フナさんは、トップアーティストの専属メークとかもやってるから、これぐらいの変身はお手のものなのよ♪」
フナさんと呼ばれるそのスレンダーな女の人は、どうやらプロの方らしい。
んー・・
それも頷ける・・
マジすごい!これなら・・空にも誰にもバレナイかも♪
「じゃ、行こうか?」
私が変身している間に、りかちゃんの仕度も終わっていたらしく、そのお姿は、私以上にキレイさが↑してた。
「なんか・・かえって目立ってしまうんではないかい??」
「堂々としていれば、大丈夫だって♪」
私の心配を他所に上機嫌なお嬢様。
はぁ・・まぁ、
とにかく、ここまで変身させてくれたフナさんのご好意を無にすることもできないし、
りかちゃんの言うとおり、空がホントにそんな仕事をしてるのかさえわかればいいんだし、
・・・・・
とりあえず・・いろんな不安は残しつつも、りかちゃんと麗騎士へと向うことにした。


私たちの乗った車が麗騎士につくなり、すぐにリクさんが駆け寄ってくる。
「りかさま、今日は一段とお綺麗ですね。」 そんな甘~~~い一言もつけて♪////
「?・・お嬢様は?」
りかちゃんの後から、車を降りようとしている私にリクさんが気付き、すぐにそう尋ねてきた!
し、しまった!何て答えよう!!
「友人の美加よ、今日は一緒に遊ぶから、よろしく頼むわね。リク」
返答に困っている私の代わりに、りかちゃんがフォローに入ってくれた!うぅっ!!
『サンキュ、りかちゃんっ』 心の声でそうりかちゃんにお礼を言う私。

「・・・はい、かしこまりました、お嬢様。」
リクさんはお嬢様りかちゃんの言葉に頷くと、私の手も取ってくださり、、エスコートしてくれる///
わわ///ウチの執事(←空)にこんなコトされたことねーから、テレるぜ///
と、ところで・・
私が美未香だってーの、 ば、ばれては・・ないよね? 
チラッと横目でりかちゃんを見ると、それに気付いて、りかちゃんが親指を立てニッと笑った。
ホッ・・なんとかばれてないみたい。
入口を入ると、ずらりと並ぶ執事様たちに「おかえりなさいませお嬢様。」と光り輝く笑顔つきで言われ、かなり、テンション↑↑になる♪
ルンルン気分でりかちゃんの横へ行くと、
「あんた、今回の目的忘れてないよね?」 と、睨まれたっ!
「う///!」 やべー、マジで忘れそうだったよっ!!
へへへと笑って誤魔化したが、たぶん、りかちゃんにはバレバレだろう。
軽くため息つかれたし///
しっかし・・
「どこに行けば・・空居るんだろ・・」  
ずらりと整列された執事様の中には居なかった。
ホールに出てみても、各、お嬢に仕えてるキレーな執事さましか見当たらない。
あとは・・
部屋・・?
でも、別人になった私があの部屋に入って誰かに見つかりでもしたら、不審者扱いされるんではないかい??
んー・・
「美未・・じゃなかった、美加、どこ行くの?」
コソッと抜け出そうとして、りかちゃんに見つかった。
「えー・・と、ちょっと、トイレ」
「ふー・・ん」
「じ、じゃ、」 咄嗟にそう誤魔化した私は、あの部屋へと急いだ。

・・もし、誰かに見つかっても、部屋を間違えたって言えばいいしね。
大丈夫だよ・・ね

ドキドキしながら空の部屋へと続く廊下を早足で進んでいると、
「お嬢様はどちらへ?」 と後ろから声をかけられた!
ギックーーーーーンッ!!!
恐る恐る後ろを振り向くと、
「!」 そこには、空に言わせると、ちょ~ヤバイあの神さんが立っている!!
神さんは、私の顔をじっと見つめてきて
「・・お嬢様は・・」 
「う!」 ば、バレたかっ??!!バレたのかっ??
「初めて見るお顔ですね♪」
にっこりと笑顔でそう言う神さん。
はぁぁぁぁぁぁあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~
バレてないっ!
よ、良かった~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と、ホッとしたのも束の間、
「専属の執事は?」 と聞いてきた!!
「えっ!――っつとぉ・・あ・・その・・」
返事に困り、焦る私に
「?・・まだ指名してない?です?」
「えっ!!あ、う、ううん、ううん、し、指名はしてあります///あの、今から、その部屋へ行く途中なんです・・」 よし!とりあえず、乗り切ったぞ!
「では、部屋までお送りいたします。この先でよろしいですか?」
「ぅえっ!?」 
わわっ!この展開は考えてなかったよっ!
どうする?どうする?どうする??? と、心ん中で叫びながらも、神さんに手を引かれその先へと進んでしまってる私。
おーーーーーーーーーーい  どうする気ですかーーーーーーー!
あ・・だんだん空の部屋が見えてきた・・
でも、そこです・・なんて言えないし。 
はぁ・・ 空の部屋を通り過ぎようとした、そのとき
ガッ!
「――っぅ!!」
いきなり、神さんが引いてくれてた手を強く握ってきた!
そのまま、空の部屋の丁度反対側にある扉に体を押し付けられる!!
「なっーー!!う!」
何が起きたかわかんない私の顔の近くに、神さんは自分の顔を近づけてきて
「上手いね♪この変装♪美未香ちゃん♪」 ニッ
「!!」 耳元でそう言ってきたぁ!
み、見破られたっ??!
「なっ、なんでっ??」 完璧なまでに変装したハズ!なのに!なんで??
「ふ・・最初はわかんなかったよ、さすがにね♪でも、声は変えられないよね?」
「あ!」 思わず、なるほど!って顔をしてしまった!
「ぷ。マジ面白い♪、
あのね、ついでに言うと、ここのロビーの部屋持ちは幹部とNo.3までの執事しか使えないの♪」
「へ?」
「店長とマネージャー・・俺とリク・・と、 空。」
「え・・」
「あとの連中は、他のロビーに続く廊下の方。」
「!」 
「昨日、今日の客がいきなり、ここの幹部の部屋なんて知らないだろーし?ましてや、看板執事の指名客なんかになれるハズはないからね。」
「え?」
「リクの部屋を通りすぎたトコで、それが確信にかわったよ。」
「!?」
「その先は、空の部屋しかないからね。」
「ぅ!」
神さん・・ソレわかってて・・わざと、・・試した・・?
「その声・・空・・とくれば、もう美未香ちゃんしかいないでしょ♪」
「!」
ニッと笑うその笑顔になにか恐怖を感じた私は、
「いえ、迷っただけです。勘違いですよ、私そんな名前じゃありませんから。」
まっすぐに神さんを見てそう言い切ると、押し付けられてる扉から体を離そうとした。
でも、神さんの力は強くて、ビクともしない!
「ふー・・ん、そうなんだ♪ じゃぁさ、ちょっと遊んでいかない?君、マジ俺好みなんだよね♪」
カチャ
「へ?」 
背にある扉のノブをいきなり回され、体重をかけてた私の体は、半分倒れこむようにして、その部屋へと入れられてしまった!
「ひゃっ!」
足を絡ませながらも、なんとか、倒れずにすんだことにホッとしてると、後ろで扉がパタンと閉じられた音がする。
「――!・・え・・?」 この部屋・・ もしかして・・?
「俺の部屋へようこそ♪姫♪」
そう言った神さんは、手を差し伸べてくる。
「// あの・・っ、私、帰ります!」
その差し出された手を避けて、扉に手をかけようとした
が、
ガッ!!  「――!!っぅ!」
両手首をがっちり掴まれ、そのまま引きずっていかれる!!
「なっ!やっ、離してっ!」 もがいても足をふんばっても、しょせん男の人の力に敵うわけがなく、
ズルズルと隣の部屋まで引っ張られて行く
ドサッ・・
「ぅ!」 乱暴に投げ出されたその場所。
あ・・れ? この感覚・・前にも・・
ハッ!そうだ!空の部屋と同じカンジ!!
て、コトはっ!!
「!」 やっ、やっぱり・・っ!
空の部屋と同様、
・・ベッド代わりにもなるというふかふかソファ。
≪あいつ・・目ぇつけた女は、絶対にやっちまうから≫
あの時、空が言った言葉が頭の中でリンクする。
ギシッ・・
「!」
真上に神さんの顔が・・あれ・・?
「え?」 なんで??いつのまに??
気がつくと、私の体にまたがるカンジで神さんが上にいる・・。
「――っう!!」  
手は動かない。ううん、動かされないように神さんが掴んでるっ
そ・・っ、空~~~~~~~~~~~~~っ!!
やだやだやだやだ!!空っ空っ空~~~~~~~~~~~~っ!!!助けて~~~~っっ!!
その時、
バタンッ!!
「!!」 「?!!」
扉が大きく開かれた音がした、そして次の瞬間、
ガッ!! 
て、音と振動が響いてきて、
目の前に居たはずの神さんが・・・消えた。
え・・?消えた??
恐怖でまだ強張ってる体は言う事をきかない。でも、目だけは動かせる!
その視力だけで、何が起こったのか、何が起きたのか把握しようと必死に動かしてみた。
「――ってぇ・・」
「!」 
今の声・・神さん・・え?ソファから少し離れたトコから聞こえたぞ?
さっきまで、まん前に居た・・よね?
なんで?ソコ??
「美未香無事っ??!!」
「へっ?」 不思議なコトは続くみたいで、すぐ側からりかちゃんの声も聞こえた!
なんなの??幻聴??
恐々、その声のした方へ視線を移すと、
「あれ?」
それは幻聴でも、不思議体験でもなく、正真正銘そこにはりかちゃんが居て、四つん這い状態で私の顔を覗き込んでる。
えっ?えっ?
キョドってる私の体をりかちゃんが、手を貸しゆっくりと起き上がらせてくれた。
体が動いたのと、背中に回ってるりかちゃんの手の体温で
だんだん・・正気を取り戻してくる・・
私・・何してた・・?
神さん・・に・・私っ・・
「ってんだよ!空っ!!」
ビクッ!!
神さんの怒鳴り声!  え・・?
今、そ・・空って・・?
アレ?まだ私おかしい?

ガッ!  「ぐぅ!」
えっ? 頭がついていくよりも先に、また激しい音が響いて部屋が揺れる!
「リク止めて!」 私の側でりかちゃんがそう叫んだ。
りく・・リクさん居るの?
目を思いっきり見開いて、部屋を見渡す
と、
床に寝転がってる神さんが見えた。
・・・その上に誰か乗って・・る
その人の腕と肩を抑えてるのは・・リクさんだ・・。
「落ち着け!空!」
え・・?今、リクさんなんて言った?
「すっこんでろ!リク!」
え・・? こ・・この声・・
「どけや!空ぁ!」
「!!!」
そ・・空?
やっぱり・・そこに居るのは・・
神さんの上に乗っかってんのは・・空・・なのっ?!
もう一度、よく目を凝らす。
「!」
薄暗い部屋の中でも光りを放っている・・その・・
・・鬼のような瞳!
―――――――っ!!
この瞳を間違えるわけがない!!
やっぱり
やっぱり
やっぱり