鬼畜執事のキング

・・ん
空は抱えているものが多すぎる。
絵里子さんのコトとか
未だ聞けずにいる・・おウチのコトとか。
絵里子さんの事は話してくれたけど、
空、家のコトになると必ず突き放すような言動になるから。
家なんてない
家族なんていねぇ
って。
ぬぅあぁぁ~~っ!それを聞いていいのかもわかんないのに!私からは言いだせないよ
「なに悩んでる。」
「う!」
黙り込んで唸ってる私を見て、すかさず空が聞いてきた。
あんたの事だよ!
・・とは言えないから、
とりあえず
「悩むってゆーか。
・・前から・・その」
て!!どーしよっ!!誤魔化そうとしたものの、な、なんも思い浮かばねぇしっ!!
「言(い)え。」
「は?ええっ???なんでわかったの??」
「あ?」
「うん、あの、その通り!!空の『家』のコトだよ!さすが!鋭いねっ!また私の心を読んだねっ☆」
「ああ??」
「んっ?」
え?なに?空の目が鬼畜化してきてますがっ??
何故に??
「俺は、言ってみろっつーイミの『言(い)え』と言ったんだけどな?」
「は?」
え・・???
いえ??
いえ???
ん~~~~~???ソレは、つ・・ま・・り?
『家(いえ)』ではなく??
『言(い)え』っていうイミで??
完璧、私の勘違い???早とちり??えへっ☆おバカさんっ♪
て!!ち、違~~~~~~~~~うっ!!!

黙り込んだ上に真っ青な顔で1人ノリツッコミしている私に
「は~~ん、俺ん家の事がそんなに気になんのか。」
と!!追い打ちっ!!
「ぅ!///」
こ、こ~~~なりゃ、もう聞くっきゃないでしょ!!!
「あのっ!空っ、」
「普通な家庭だよ。」それより先に空がその言葉で私の声を遮った。 
「え?」
きょとん顔する私の顔を軽く笑い、
「優等生な俺の事を自慢に思ってる親。」 こう話を続ける空。
「あ・・そう」  ち!軽く自慢されちゃったよ
「いや、・・思ってたって言った方がいいな。」
「は??」 過去形??今も十分、頭いいじゃん
「勉強だけじゃなく、いい子ちゃんでもあってほしかったんだろーよ。
元カノの妊娠がバレた時、それがよくわかったかんな。」
「は?」
え?はっ??っうえっ??!軽くサラッと言っちゃってくれちゃってるけど??
「えっ、??なに?!親に?ばっ、バレたのっっ??」
「ああ。」
「!」どっひぇぇ~~~~~っ!!!めっちゃ窮地じゃん!
「別に、俺はそれでいいと思ったし。
親にも知ってもらって子どもを産んでもらうつもりだったから。」
「-!」 ぅ・・
「だけど、
 八・・」
そこで 空が笑った。
顔は歪ませてるのに、口角だけ不自然に上げて。
「・・そ」 ・・ら?
「お前なんかウチの子じゃねぇ!
・・だとさ。」
「!」
「俺に裏切られたってさ。ハ・・」
またあの笑い方をする空。
「どっちがだよ・・っ、くそっ!」
今度はあからさまに顔を歪ませる。
「っ」
「・・だから
家を出た。」
「えっ・・」声が詰まる
・・・
なんも言えないっ
膝の上でグッと握る手に力が入る
それに気づいたのか、空は私の方に向きなおし
「重・・っ」 と一言つぶやいて
グイッ!
「っえ?―――っっいったたたぁっっ!!!」
いきなり私の頬を引っ張り上げてきたっ!
「じょっど~~っあにずんど~~??ぞだ~~!!!」
「ああ??ちゃんとしゃべろよ♪」
「ばからっ、ぞだぎゃ、ぽっべをびっばっでるがらだちょ~~??!!」
「はあ??イミわかんね♪ぶはっ♪」
さっきの表情はどこえやら?
それはそれはと~~~っても楽しそうに笑ってやがる~~~~
そうして、笑うだけ笑うと満足したのか、頬を掴んでる手をやっと離してくれた。
「いっだぁぁ~~~」
半泣き状態で頬をスリスリしてると
「んな暗い顔すんな、今みたいにヘン顔でいろ、しゃべりにくいだろが。」
「うっ!う・・ん、ごめん
・・・んんっ?!て!ヘン顔だと~~~っ!!」
「ぷはっ♪遅っ!」
また高笑いし始めたっ!
なんて失礼極まりない奴なんだぁぁぁ!!!!くぅ~~~~~
「聞く気ねぇんだったらここで止めッケド?」
私の不のオーラを読み取ったのかそう言い放ってきやがる!
すぐさま、ブンブン横に首を振り「ど~ぞおかまいなく」のイミで両手を振ると
空は軽く溜息をついてから前に向きなおした。
そして、出てきた言葉は、
「あー・・そうだ、カイの事だけど。、」
「へ?」 なんで?いきなりカイさん話になるんだ?
「・・美未香、もう気づいてるかもしんねーケド、カイは俺の従兄だよ。」
「えっ??!い、従兄だったの??」なにそのいきなりのカミングアウト!
「・・気づいてなかったのか・・」 ハァ・・と軽く溜息つかれた!///
「いえいえ!それ以前にその事実の告白に驚いたんですケドっ??!!そ、それにっ!!顔、そっくりだから兄弟かな??って思ってたし!!」
「あ?一緒にすんな!俺の方がイイ男だし!」
そこ重要視するトコなんかい??!!
「つか!お前はもっと彼氏を重視しやがれ!」
怒られたしっ??!!
「話、戻すぞ、お前としゃべるとどんどん脱線していくだけだかんな。」
「な!///」 にぅおぉぉ~~~~~!!!どっちがだい!!
不のオーラが止まらない私なんぞ軽くスルーして空はさっさと続きを話し始めた。
「カイのこの麗騎士で働く事は親も承諾してたんだ。」
「え?それはOK? そんな親だったら、そのバイトってダメって言いそうだけど?」
「従兄のカイの店だし、店には出ないで雑用の仕事のみって条件だったからじゃね?」
「あ、ああ」  なるほどっ!
「でも、結局はガキつくっちまったりしたもんだから、カイまでもうちの家出入り禁止。」
「あ・・ああ」 そう・・なるよね
「すべて俺が勝手にしたことなのに、カイはその事にすげー責任感じやがって
家を出た俺を無理やりここに連れて来て住まわしたんだ。」
「・・ぁ」 だから・・
「親からも見離され、元カノにも裏切られてボロボロになってたからなぁ俺。
カイも心配だったんじゃねぇか?あの部屋にしろ、鬼士にしろ、常にカイの目の届くとこに置かれてたし、
まぁ、それでもなかなか立ち直れなかったけどな。八ハ・・」
「・・」 
「それからは、ずっと家には帰ってもいねぇし、連絡も一切してね。
カイのトコに居るってのは知れてるだろーけど、向こうからもなんも言ってこねーし。」
「!」
「今更、会いたくもねーし。」
「-!」
「俺は、これからもずっと1人で生きていくよ。そう決めたんも俺自身だかんな。」
そう言って、ニッと空は笑う。
・・
「それで・・ほんとにいいの・・かな?」
「ぇ?」
今の表情を見てたら、そんな言葉が出ちゃった。
だって・・
「空の顔、辛そう。」 
「!」
「ホントに・・」
「いいんだよ!!」
「っ!」
私の声なんて消えちゃうくらい大きい声でそう言われた。
でも、それがかえって私が言った事を肯定したってイミに聞こえる。
「・・悪ィ」
大きい声を出した事なのか、否定してみせた事なのか、すぐに空はそう言ってきた。
・・
実際に、その当事者だった空にしかわかんない事もあるよね。
たぶん、ソレは。・・その時のキモチは本人にしかわかんないと思う
私の言う事はただのキレイ事ばっかかもしれない
こう考えれば?とか、
相手は、そんな事を思ってないよ、とかなんて
第3者だから言えれるんだよね
・・
だったら
スッ・・
「!」
「私も一緒だから、空は1人じゃないよ。」
膝の上に置きっぱなしにされてる空の左手にそっと触れた。
「-!」
「ね。」 
「・・・」
「私を、空の家族にしてください。」
「は!?」
「あ。」
れ?今の言葉、なんかヘン・・
これじゃまるで・・
「ばかかっ!」
「ひっ!」
なに??なに??怒られたよ私??え??やっぱマズかった?今の言葉っ
「ソレは、俺がっ、――・・っ!」
「はひ??」
? ん?空?黙っちゃったよ?
「・・さっきの、お前の言葉取り消せ。」
「へ?え?、あ、///ご、ごめ・・」 や、やだ私ったら、何をうぬぼれた事言っちゃったんだろっ///
「だ、だよねっ、私なんかにそんな事、言われても迷惑だよね///」
ひゃ~~~////身の程知らずだったよ~~~
「お前に言われるとは思わなかった、くそっ!」
「-ぅ・・ごめ・・」 うううっ・・
「あれは俺のセリフだ」
「・・・?
 ・・・は?」
「男より先に言うんじゃねぇ!カッコつかねーだろ!」
「は・・い?」
「・・」
「?そら?」
「・・俺の嫁になってくれ。
俺にはお前しかいねぇ。」
「―――!!」 っ
え・・?空?
え? 今、私・・
「まぁまだ、俺らは学生だから、今すぐには結婚は出来ねーケド、
それ前提でいてほしいってこと。」
「・・・・・」
「美未香?」
「・・・・・」
「おい?」
「・・・・・」
ポロポロ・・ポロポロ・・
「わっ!!美未っ、」
「い、今すぐがいいっ」
「は?」
「今すぐ結婚したい、ばかっ!う~~~~~~~」ボロボロ・・
「ばっ、//
・・かだな。ホント」
「う~~~~~~~~/////」
泣きやまない私を、空は優しく抱きしめてくれる。
そんなんされたら、ますます涙が止まんないよっ
「ばか、空ぁぁっ///」
「ああ、はいはい」
「今すぐにじゃなきゃ、結婚しない」
「あーわかったわかった。」
「ホントだからねっ!」
「ああ、わかってる。」
そんな言葉をいつもの鬼畜口調ではなく、とっても優しい声で答えてくれる空。 
今の私たちが結婚なんてできるワケ無いってことは、私だってわかる。
空のあの言葉を夢だと思いたくないただの私のワガママなの

でも、空は本気で考えてくれてたんだね・・


それから時間も遅いという事で、私とりかちゃんはタクシーで帰らされた。
空はリクさんとまだ戻ってこないカイさんの事を待つらしい。

店の裏に着いたタクシーに私たちが乗り込むと、空は私の頭を撫で
「おとなしくしてろよ。」とだけ言い、鉄柵の中へと消えていく。
すぐに走り出すタクシーの中で、りかちゃんと2人きりになれた私は、あらためてりかちゃんにお礼を言った。
「なによ、改まって~♪」キャハハッ♪と、りかちゃんは明るく答えてくれる。
「でも、
りかちゃんが居てくれなかったら、空ともうダメになってたかもしんないし。」
「そんな大袈裟なっ!」
「ううん・・・」 ・・
そこで私は、りかちゃんにホントの事を言おうと決心した。
りかちゃんなら大丈夫。
コレを言っても受け止めてくれる。
「あ・・のさ。」
「ん?」
「ずっと・・その黙ってたんだけど・・」
「?」
「あの、空の事なんだけど・・ね」
「うん?」
「実は・・空は・・
同じ学校の、私の彼氏と言われてる相馬来紀くんと同一人物なのっ!」
つ、ついに言ってしまったぞぉぉ―――――っ!!
「え!?」
「ご、ごめんっ!今まで黙っててっ!その、空の正体バレると困るから、
あ、でも、りかちゃんには言っても良かったのかもしんないけどっ、そのやっぱり。本人の問題だしっ・・」
「・・・・」
「私が言っていい事じゃ・・って、」ア、アレ?りかちゃん固まってる??
「ご、ごめん、いきなりこんな事言って驚くよねっ!」
「・・・つか。」
「え?」
「知ってたし。」
「へ?」 
「・・・・」
「え?」
「・・美未香ぁ・・今日、ここでの私を見てて、ソレ知らないでいると思った?」
「は??」
「はぁぁぁ~~~~・・」 思いっきり大きな溜息をつくりかちゃん。
「えっ?え??」
「相馬が空ってコトは、美未香より先に知ってたよ。」
「はあ?」
「麗騎士のこんなとこまで一斉しているのに、空の正体ぐらいわかんないわけないでしょ。
ていうか、・・はぁ・・っ」
う////!また溜息っすかっ!!
「美未香、あんたらしい。」
うお?軽く呆れられたよっ??!私っ!
「まぁ、知っててとぼけてた私も悪いけど、ここまで来て、まさかまだそこに気づいてないとは・・」
「はう!///」頼むっ!もう溜息付かないでおくれっ!お嬢っ!
「どんまい」
「う///」
まさに鈍感さがバレただけの私の告白に、あまりに不幸だと思ってくれたのか
りかちゃんは豪邸に着くまでの間、色々と教えてくれた。
空も、りかちゃんが [空=相馬]っていうのを知ってたって事も
「美未香から俺の正体の事言われたか?」なんて聞かれた事も。
それに付け加えて
「そんな美未香がいいんだよ♪」と慰められたりもした。
ううう///
私はもう少し敏感になりたいです/////
「まぁまぁ、そんなに落ち込まないでよ。私だって、つい1年前くらいからだよ?色々と知ったのは。」
「ぇ?」
「リクのホントの正体を知った時からだから。」
「は、えっ!」
「美未香も驚いたでしょ♪ふふ♪私も最初は驚いたよー、あの上品な顔の裏にあんな鬼が住んでたなんてさ。」
「! りかちゃんも同じ事思ったんだぁつ!だよねっ、びっくりだよねっ!
鬼だと思ったよね!それにボーソー族だったしさ!!」
「そうそう!まさか!と思ったよね~」
リクさんネタになってガールズトークに突入した私たち
散々、リクさんをいじり倒したあと
「そういえば、どうしてリクさんの正体わかったの?」
ひーひー笑いながら私がそう聞くと、いきなりりかちゃんの笑いが止まった。
「?」
「それは・・」
キッ
そう言いかけたところで、タクシーがりかちゃんちの前に到着。
「あ・・ごめん。また今度、話すねっ、」
自動で開く戸が開けきらない間にりかちゃんはそれだけ言って早々とタクシーを降りてしまった。
「りかちゃ・・」
「おやすみ~♪」
手を振って走りさるその姿を見て、もしかして今のは聞いてほしくない質問だったのかな?と思ってしまう。
そんな反省をしつつ、タクシーは次に私の家へと到着した。

ドッサ・・ッ
家に入るとすぐに自分の部屋へと駆け上がり
まんまベッドに倒れこんだ。つか、沈みこんだ。

ハ・・ハードだ。
空と出会ってから、ほぼ毎日のようにこんな日が続いてる。
特に今日1日で体験した事は、ごくごく一般市民的な私にはすでに許容範囲を超えていた。
まさに一生分の経験した感じ・・
まだ頭ん中が整理できていない
いっぱいいっぱい・・聞いた。
いっぱいいっぱい知った・・真実を。
その中で一番、まだ信じられない事・・
空に
・・プロポーズされた事。
う///今、思い出しても全身が火照ってきちゃう///
夢・・じゃ、ないよね・・
私、ホントに言われたんだよね?
「嫁に・・」・・って///きゃぁぁぁぁ////
なんか昔くさい言い方なんだけど、そう呼ばれると弱いっ///
空のお嫁さん・・
ひゃ~~~~~~~~~~~~~///////
どうしよ・・
マジで現実なんだよね・・コレは。
明日になったら「は?」とか言われないよね?
はぁ~~////
そんなんをベッドの上で転がりながら門答を繰り返しているうちに
知らない間に寝てしまっていた。
気づいた時は朝で。
何時かなとスマホを見る
「んー・・6時・・かぁ
まだ、起きるのには早ぃ・・ん?」と、アレ?2件の着信と1件のメールが残ってる。
履歴を見るとそれは全てが空からのもので。
「げっ!また気付かず寝ちゃってた??」
空、怒ってるかもっ!ドキドキドキ
と、とりあえず、
朝から空の怒鳴り声を聞く勇気と体力なんて無ぇしっ!先にメール見て空の怒りモード免疫つけとこ!
チャッ
わけのわかんない理屈を述べてメールを開くと
そこには意外な文字が残されてた。
『悪ィ。朝、迎えに行けね。なるべく学校には行けるようにするけど、まだどうなるかわかんねぇから、また連絡いれる。』
と。
送信時間を見ると、着歴の時間より遅い。
て、ことはこれを言うための電話だったってコトだよね。
・・
昨日、オーナーさんと何かあったんだろうか。
学校にも来れないかも・・って、もしかして絵里子さんとの事でまた何かおきたんじゃ・・
ギュ・・ッ
手の平を強く握る
う~~っ
「はぁ・・っ」
悩んでてもしょうがない、軽く溜息をついてまだ早いけど学校へ行く準備をした。

いつもより早い登校。
まだ、校舎には誰もいない。
こんな早く学校に来たのなんて初めてかも。
教室にはいり1人ポツンと席に着いてると、
ガラッと戸が開く音がした。
「ん?」 こんなに早く来る人もいるんだとその方向に目をやると
「あ。」
「あ。」
お互い目が合った瞬間、同時にそんな声が出た。
だってそこに現れたのは、私に告白めいた事を言った男子くんだったから。
うわ!////ど~~しよ。
何気に焦る私に、その男子くんは
「鈴木をこんなに早く学校で見たのは初めてだな。」
とクスッと笑いながら言われた。
「う///た、たまには早起きしてみました。」
どう返していいかわかんないでなぜか敬語的な返答をする私。
「ぷはっ♪」
思いっきり笑われたし!////
「そ、そっちこそ(←名前わかんないからっ)
早いじゃん!」
そう切り返すと、
「あ~俺はいつも。剣道部の朝練あっから。」
「え?剣道部?」
「ははっ、知らなかったんだ俺が何部だって事。」
「えっ??あ、///ご、ごめん」
「はぁ~・・。これでも少しは女子に興味持たれてる方なんすケド?
鈴木にとっては俺なんて眼中になかったんだ。マジでショックだな。」
軽く頭をかく動作をする男子くん。
「あ、あのごめん、その私・・」
「俺の名前も知らねぇーだろ。」
「う!」 図星っ!!
「相馬しか見えねってコトか。」
「え?あ、ううんち、違うよ?そ・・相馬くんも最初は下の名前とか全然しらなかったし!たぶん私の物覚えが悪いんだと思う!」
「え?相馬のも知らなかったの?」
「う、・・うん」 それで散々おこられました・・うぅ・・
「そっか。ならいいや。」
「へ?」 いいの?
「俺は北川弘樹(きたがわ ひろき)皆には「ヒロ」って呼ばれてる。鈴木も俺の事、そう呼んで♪」 
にこっ♪
「う//」朝の爽やかさがまさに彼にはぴったりだっつー笑顔を向けてくる。
近頃、夜の帝王なのばっかしか見てなかった私には、それがかえって新鮮に映り
始業時間までまだ時間があったため、色々とクラスの人の事とか先生の話とかしてた。
話して見るとわかる。
北川くん・・じゃなかった!ヒロが女子に人気がある事。
もともと端正な顔立ちだけど、笑う顔が特にいい。
癒されるっていうか・・
私1人でいたら、今頃、空の事で悪い方向にばかり考えて落ち込んでたと思う。
「ヒロが居てくれて良かった」
つい、そんな言葉が出てしまった。
そのあまり深く考えもしないで出た言葉はヒロにすごい誤解をさせてしまったとは思いもせずに・・
グイッ
「へ?」
思いっきり腕を引っ張られ、気づいた時には
ヒロの胸の中で・・
え?
私、今・・抱きしめられてる??
あまりいきなりの事で頭が付いてってない私の耳元に
「俺にしとけって。」
とヒロの声が。
「!―っ、ちょ、///離して!」
我にかえった私はすぐにヒロから離れようともがく、
そこへ
ガラッ 
「はよ~・・っと!!お??お邪魔だったかっ!」
入ってきたクラスメイトの男子たちにこの状態を見られてしまった!!!
その瞬間に腕を緩めたヒロからすばやく体を離して教室を飛び出した。
「-っ鈴木っ!」
後ろからヒロの叫ぶ声が聞こえる。
でも、それよりも私の脳内には他の男子にあんなトコを見られた恥ずかしさでいっぱいで
どうしよどうしよ/////
教室なんてもういけないよ~~~~~っ
階段を下っていく途中で、登校してきたりかちゃんとばったり会って思わず抱きついた。
「わっ!!美未香っ??どしたの??」
「うえ~~~~んりかちゃ~~~~ん」
そんな意味不明な私をとりあえず、屋上に上がる昇降口まで連れて行ってくれ
「なにかあったの??空の事??」
ここは人気が全くないと分かっているせいか、そんなセリフを堂々と聞いてくる。
「ううん、違う!、ヒロにっ・・」
「え?ヒロ?」
「うん、りかちゃん、ヒロの事知ってる?」
「あぁ、まぁ、人気あるからね、奴は。」
「そうなんだ・・」 
「で?ヒロになにされたの?女子にヒドイ事するような印象はない男なんだけどなぁ・・」
「・・・抱き」
「え?」
「・・抱きしめられた///」
「はぁっ???誰が?誰を??」
「だ、だから、私が!ヒロに!」
「ええええっ???なんで????」
「・・その、実は・・」
私はりかちゃんにヒロに告白されてた事を言った。
んでもって、抱きしめられたその場を他の男子達に見られた事で教室から逃げてきたってコトも。
「ありゃ・・」
思いっきり、手で顔半分覆いガックリするりかちゃん。
「どうしよ。・・恥ずかしくて生きてけないよっ///」
「たぶん・・もう噂のネタになってるだろうね。」
「うぇっ!や、やっぱり??どうしよ~~~~っ、もう教室行けない~~~」
「いや・・それよりも・・」
「へ?」
「この事、空の耳に入る方がヤバいんじゃない?」
「へ?」
「そっちの方が、教室戻れないとかよりもかなり重要だと思うよ?」
りかちゃんは苦笑いをしながらそんな事を言う
「・・え~~っと・・?」
「神の時、思い出してみて。」
「!」
そ、そうだ!たしか・・神さんの時
あの時、マジで神さんを殺すんじゃないかってぐらいの勢いだった
ゾッ・・
「今日は空はまだ?」
「えっ?あ、ああなんか今日はもしかしたら来れないかもって」
「そっか、じゃ、少しは時間かせぎ・・」
と、りかちゃんがしゃべりかけた瞬間、
~~~♪~~~♪~~~♪
いきなり、私のスマホが鳴った。
「?」 ポケットから取り出しディスプレイを見ると
「げっ!!空からだっっ!!」
「えっマジで?」
「ど、ど、どうしよ!!出なきゃダメだよねっ!!」
「ま、まぁ、とりあえず出たら??今の出来事の事じゃないかもしんないじゃない!」
「あ、ああ、そっかそうだよねっ!!」
「いい!できるだけ普通に!なにもなかったようにしゃべるんだよ!」
「う、うん!!わかった!」
りかちゃんのアドバイスの元、鳴る電話に出た。
「も・・もしもし」 普通に~って言われても、つい声が震えてしまう。
ヒロの事なんて、そうそうすぐに空の耳になんか入るワケないのに。
なのに
「てめ。いい度胸だな。」
「へ・・」
「今、どこにいる・」
「え?」
「どこに居やがるっ!ってんだ!」
「ひっ!!お、屋上に上がる昇降口ですっ!!」
「ソコ、動くんじゃねーぞ!」
ブチッ!
そう言われて思いっきり電話を切られた!!
「え??えっ??」
「空、なんて?」
「な、なんか、めっちゃキレててっ、今、ここに来るって!!」
「は?空、学校来てるの?今日は来れないんじゃなかったの??」
「わ、わかんない、メールではそんなふうに言ってたけど」
「うわ!じゃ、教室での事を知って・・」
「え・・」
「修羅場?」
「修羅場?」
「ん~じゃ、私はこれで。」
「ええっ??!!」
ササっと腰を上げ、階段を降りようとするりかちゃん!!
「いや~~~待ってぇぇ!!りかちゃ~~~ん私を1人にしないで~~~」
腕にすがり無理やりひきとめてると
「よぉ」
下から上がってきた空・・相馬くんから低――いお声をかけられた!!
「ひっ!」 早っっ!!
「あら。」
いつもにも増して光を増してる鬼の目に体の力が抜けた私の腕をスルリと解くとりかちゃんはその場を去って行ってしまった。
ぎょえぇぇぇぇっつ!!一体っこの状況を私1人でど~~~すればいいというんだぁぁぁぁぁ!!!
 
後ずさりする私と階下から怖のオーラを出しまくって上がってくる空。
「えっ、えっと空??きょ、きょ、今日は学校これるかわかんないんじゃ・・」
私が苦し紛れにそう発した質問が悪かった
「あ?俺が学校にこねー方が良かったんか?」
「そ、そーいうんじゃ・・」
「俺が居ねー方が他のヤローとイチャつけるもんなぁ」
「えっ?!っと!////」 
うわ~~~~~地雷踏んじまったよぉぉ
絶対にヒロとの事言ってるよ~~~~~~~
「だから、ヒロとの事は誤・・」
ガンッ!!
「ひやっ!」
いきなり横の防火扉を思いっきり殴りつけた空。
「俺以外のヤローを呼び捨てすんじゃねぇ!!」
「はひっ??!!」
「あいつとどーゆー関係なんだ?あ?」
「え??」
言葉と同時に私のまん前に来て顔を近づけてくる。
こ、こえ~~~~~よぉぉぉぉ
「いつからだ!言ってみろ!」
「っ??」
このままかみ殺すぞ的な勢いでそう聞かれた。
でも、そんなん聞かれても・・
「言いたくねぇってか!くそっ!」
そう言葉を吐き捨てると、空は今上がってきた階段を下り始める。
「えっ?そ、空、どこ行く気っ??」
なんか悪い予感がしてつい、そう呼び止めてしまった。
「おめぇがなんも言わねぇなら、あいつに聞くしかねぇだろが!」
「へっ??あいつって!ヒロ・・っじゃなかった北川君??」
ヒロと口にした瞬間、ギロンとあの鬼の目が光るから思わず言い直した。
でも空はその睨みをした後、何も言わずプイッと前を向いて階段を折り始める。
「ちょ、」
わ!ヤバイって!!待って待って!そんなっヒロんトコ行くって、行ってどーすんの??
聞いてどーすんの??つか!聞く前に殴り倒すでしょー!!
私に関わったせいでヒロの身が危険に晒されるてーのはあまりにも申し訳ないっ!
立ち上がるとすぐに空の後を追った。
早足の空に追いつけたのは階を降りえ、教室に向う廊下の途中で。
グッと空の腕を引っ張っぱると、空がチラッと私の方を向いた。
「あ、あの、空、あ!相馬くん!」←き~~(怒)アレもこれも呼び方指定されて呼びづらいったら!
それに付け加え!私の問いかけにウンともスンとも言やしねーしっ!ムキ~~~~
空のそんな態度にちょ~ムカついたから、
掴んでた腕をバッと離し、空の目の前に飛び出してやった!
「!」
「相馬くん!止まってよ!」
両手を広げ、行く手を阻む。
「どけ。」
「ヤだ!どいたら、教室に行く気でしょ!」
「教室になんか行かねぇよ。」
「嘘!」
「ウソじゃねぇ、だからどけ。」
「だ、だったらドコに行くのよっ??!!」 まだ食い下がるぞ!!
「保健室。」
「は?」
「だからどけ!」 ニヤッ♪
「う//」 なに?今のニヤは??
なんでそこでニヤなのか??なんかある!
そう考え込んでいる隙は私の体をすり抜けどんどん廊下を突き進んでいってしまう
「わわっ!」
慌ててその後を追いかけた。
言ったとおり、教室に近づいてもそのままスルーしていく空。
この先は階段・・
そこを下ればすぐに保健室にぶち当たる。
空の足は止まることなくその階段へと向かってて、当たり前のように下り始めた。
マジで保健室に行く気?
なにしに??
ヒロんトコに行くって言ってなかったっけ??
???マークを頭に乗せつつ、一生懸命、空の後を追った。