鬼畜執事のキング

学校に着くと、廊下の途中にある掲示板に群がっている。
「?」 なんだろ??
空をチラッと見ると、平然とした顔でそのまま足を止めることなく進んでいく。
あまり他のことに興味わかないんだろうか?
それとも、もう相馬くんモードに入ってるからか??
な~んて思いながら、その人だかりをスルーして行こうとした時、
「なんで退学なの~~??」「とうとうダメだったのかなぁ?」
「校長に抗議だよ!」「麗騎士にもだよねっ!」
え?今、麗騎士って言わなかった?
人だかりの多数は女の子、そのたちが見上げてる壁に目をやると、なにやら紙が貼られてる。
それがなにか見ようとしたら、
グイッ! 「?!」
いきなり空に腕を掴まれ無理やりその場から離れさせらてしまった。
「そ(空)・・うま・・くん?」
その行動に違和感を持った私は、空の顔を見る。
「・・・」
何も言わない。しかも前を向いたままだし!
「もしかして、あれがなにか知ってたりする?」
ほぼ確信があった私はそう言い放った。
「・・・・」
まだ何も言わない。
コラァ! とは言えないから、そんな顔をしてみた!
そしたら、
「はぁー・・」 とため息つかれたっ!!
今度こそ、言葉に出してやろかと思って
「神・・」
「コ“ラァ!あ?え??///」
し、しまった!!出しちゃった~~~~~~~~~~っ!
「・・お前ぇ、」
「う“!!」 が、学校だから、相馬くんに変身中だから、大きな声じゃあなかったけどっ!声殺して出したそのセリフはかえってこえ~~~よ!!
「すいません、お許しください、私が間違っていました、以後、お言葉には気をつけます。」
ありとあらゆる侘びの文々を述べ、チラッと空を見ると
「ふん」
と、まだご機嫌が宜しくないみたいで・・私は話を元に戻す事にした。
「さっき、相馬君、神って・・アレ、神さんの事?」
「・・・」
まただんまりかよ!
「・・ああ・・たぶん」
お!しゃべった!でもなんだよ、そのたぶんって?!
「あの子達、退学とかって言ってたけど、神さんが退学するってこと?」
「・・・ああ」
「――っ!!え??なんで??」
「しっ!」
あ・・っ!思わず大きな声を出してしまってそれを空が自分の口に人差し指をつけて
黙らせる。
「声、でぇけよ、態度もでけぇけど。」
「っ!」 なぬっ!(怒
て!そんなことで怒ってる場合じゃなかった!
「なんで、神さんが退学なの?」
今度は小声でそう聞いてみた。
「りか・・から、なんも聞いてないんだ?」
「え?」 りかちゃん??

「あ・・うん、昨日電話したんだけど、なんかお取り込み中だったみたいで、すぐ切られちゃったし・・その後も連絡ないから。」
「・・ふーん」
ふーん??え?それだけ?
「そ・・うまくん!知ってるんでしょ!教えてよ!」
↑これも小声で。
「めんどいからヤダ、りかに聞けよ。」
なっ!
そう言って、空は教室へ入っていってしまう。
んだよ!めんどいってぇぇ!!仮にも彼カノだろがっ!
彼女が聞きたがってることを「めんどい」だの「やだ」だので終わらせてもいいってーのかい??!!
き~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!

「なに、猿のモノマネやってんの?」
「なぬっ??」 後ろからする聞き覚えのある声に振り向くと
そこにはりかちゃんが立っていた。
「猿って・・」 
「だって~真っ赤な顔して、き~~ってカンジ出してたからさぁ♪」キャハハッ♪と笑う。
はぁあぁ////そんなんだったのか!!私ぃぃぃっ////
は、恥ずかしいったら、も~~~~(><)
く~~~これもあれも全て空のせいだぁぁぁぁぁぁ!!!!
て!あ!そうだ!!
「りかちゃん!」
「ん?」
「ちょっと来て!」
私は、りかちゃんの手を引っ張ると、例のごとく女子更衣室へと連れ込んだ!
「なによ~美未香~襲う気?♪」
「あのねっ!」
「あ、制服ちゃんと届いたんだね♪良かった♪」
「あ、うん♪届いてたよ、クリーニングまで出してくれてありがと~♪
てっ!!違う!」
「え?なんか手違いあった?」
「え?ううん無い無い!すごくキレイに・・って!りかちゃん!!」
なぜか、話をずらそうとするりかちゃんに私は、聞いちゃいけないことを聞こうとしてるのかなって心配になってきた。
次の言葉が出せずにいて少し沈黙が続く。
でもその沈黙を破って口を開いたのはりかちゃんで、
「・・神ね、退学だから。」
その言葉は短いのに強烈で、
「っぇ・・」 言葉を失う。

「あんなバイトは完璧校則違反だったでしょ。でも今までは、麗騎士でのバイトの事、学校側はわかっててあえて見逃してたのよ。」
「え?見逃す・・って?どーゆー・・」
「神のファンの中にPTAのお偉いさんの娘がいてね、圧力かけてたの、学校側に」
「なっ?え?そんなことできるの???」
「できるよ、お金もかかるけどね。」
「・・・」 言葉が出ない・・
「だから、学校でもあまり変装とかしてなかったでしょ神。」
「あ・・」 ん、ウィッグ付けてたりはしてたけど、空みたいに完璧な変装はしてなかったな神さん。
「え?でも、そのお偉いさんの娘さんが退学になんかさせないんじゃないの?」
そうだよね?今までだってそうやって来たんでしょ?
「今回は、麗騎士のオーナーが動いたからね、もう逃げ場が無くなったの。」
「?!麗騎士の・・オーナー??」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
りかちゃんと目を合わせたまま固まった。
麗騎士のオーナー・・
それしか私にはわかんない。でも、なに?その人が出てくるだけでこんなに状況が変わるもんなの?
りかちゃんの目が言ってる。
このことはもう聞くなって・・
りかちゃんにとってもそのオーナーって人は特別なんだ。
もしかして・・○クザ屋さんだったりして???
でも、空の事はすごく親身になってくれてるし・・
ハッ!もしかして!恩を売っておいてから、空の事をどっかに売り飛ばすとか????
だよね!よくドラマでやってるもんねっ!
空、キレーだから、絶対にそうだよ!それっきゃないよ!!
「違うから!」
「へっ?!」
「そっち系の人じゃないから。それだけは言っとく。」
「えええええええっっ??!!りかちゃんってば、やっぱエスパーだったの???」
「ソレも違うし。」
「だって、だって私の考えてることわかったじゃん!」
また見詰め合う。
「はぁぁ・・」りかちゃんは、深~~~~いため息をついた後、

「顔に出てるから。」
「は?」
「わかりやすいんだよね、美未香って、たぶん、空もわかってると思うよ。美未香の考えてることとか。」
「あ・・」 まさに思い当たる節が・・
空も何も言わなくても、なんでかわかっちゃうんだよね私の考えてること。
ん~~~~~~~~~~~~そんなに顔に出てるのかなぁ
「モロで出てるし。まぁ、そこが嘘がなくていいんだけどね~♪」
「ぷ~~~~~~~」
誉められてんのか、けなされてんだかイマイチ良くわからないが!
まぁ、ここはポジティブに!
「まぁ、神も自業自得だよね」
りかちゃんはそう言ってロッカーにもたれかかる。
「ん・・
オーナーさんがどんな人だかは別として、なんでいきなり退学までの話になったのかなぁ?」
私のこの言葉に、りかちゃんは目を見開いて驚く。
「えっ??美未香、空から何も聞いてないの??」
「?!」 たしか・・空も同じこと言ってたよな?りかちゃんに聞いてないのかって?
「・・う・・ん」
頷く私を見て、一瞬考え込んだりかちゃんは、
「・・昨日、あの後ね・・ーーー」



 

ピピピ  ピピピ  ピピピ

午前2時
空が仕事を終えて私の家に着く時間。
今日は起きてた。
ていうより
眠れなかった。

~♪~♪~~~~♪
携帯音が部屋に小さく鳴り響く。
ピッ
「・・もしもし」
「俺。」
「・・今、行くね。」 ピッ
それだけ言うと、私は玄関へ向かい静かに戸を開けると空の待つ門の側へ早足で向う。
こじんまりと作られてる塀にこっちを向いてもたれてる空。
金色の髪が今日もきれい・・
外灯の淡い灯りにもキラキラ輝いてて。
その下に見える獲物を捕らえる瞳も力を持って光を放っている。
その目が好き。
笑うと少し垂れちゃう獣の目が好き。
どうしてこんなに好きなんだろ
「美未香??」
何も言わないで空を見つめてる私を不思議に思ったのかな
空の声が少し上ずってる。
「・・りかちゃんから・・」
「!?」
「・・聞いた。」
「・・・・・」
「聞いたよ、空。」
「・・・・・」
「―――っばか。」
「ばっ、?え?なっ?」
言葉にならないうちに私は空の胸に飛び込んだ!
「-!っ?美未香っ?」
「・・・・ほんとばか。」
「ちっ!」
「・・良かった。」
「っ//?!あ? ――っとにワケわかんねー女っ!」
そんな事を言いながらも
空は両腕を私の背中に回して優しく包み込むようにして重ねてくれる。
そのぬくもりを感じながら、
私は、りかちゃんから聞いた話しを思い出していた。

「あの後、リクは自分の部屋に私を置いて、自分だけ神をオーナーの部屋へ連れて行ったの。でも、そんなんじゃ私、面白くないから無理やりオーナーの部屋へ乗り込んで行ったのよ!」
「お、面白くないって・・りかちゃん。」 お嬢なんだからさぁ(笑
「そこで、オーナーに今回の事、今までの事、全て話したわけよ!」
「うんうん」
「でも神の奴、俺の事をあまりなめない方がいいよ♪な~んて言っちゃってさぁ!今、思い出してもムカツク~~~!!」
「ま、まぁまぁ」
「そう言った後に空にやられたキズが痛んだんでしょーね、キズを手当てしろとか言い出して!治療費払えだの、顔にキズついたから慰謝料も払え!ってそりゃもう大騒ぎしてさ。ホントムカツク!!」
そう言うりかちゃんも大騒ぎ状態で(^^)ゝ
「そのとき、今まで黙って聞いていたオーナーが口を開いたのよ!」
「え?なんて?」
「・・空は? って。」
「!」
「たぶん、美未香もまだ部屋に居るだろうし、何て言おうか悩んでたら、
リクが後から来ます。って言ってくれて、それで、オーナーが納得するのか心配だったんだけど、それきりオーナーは何も言わなかったから。」
「・・そ・そうだったんだ」

「途中、美未香から電話あった時に丁度、空がオーナーの部屋に入ってきたから、
ゆっくり話しできなかったんだよ、ごめんね。」
「あっ、ううん」
そっか、だからあんな慌てた声してたのか、りかちゃん
すぐに電話を切ったのも、今、この話聞いててようやくわかったよ。
それどころじゃない状態だもん。

「--で、空が入ってきたら、一瞬で空気が変わったの。」
「え?」 どーゆー・・
「部屋に入ってすぐに、空、オーナーに向って
   土下座したんだよ。」
「---っえっっ??!!」
えっ?ど、土下座???あの空がっ??普通の男の人でもものすっごく嫌がるあの土下座をあの鬼畜様がしたのかっつ???マジかっつ??
「驚いたわよ~」
いや!私も驚いたよっ!心臓バクバクいってるよっ!!
「オーナーに向って俺の責任だって謝ってた。横に居る神はソレ見て大笑いしてた。」
「くっ・・」
「空、責任とってお店辞めるって・・」
「えっ!!」
「神は当たり前だ!って高笑いしてた。でも、その後、オーナーがね、なんの責任をとるる気だ?って聞いてきて。」
「・・・」
「神は相変わらず、俺様への暴力の責任だろが!ってほざいてて、
空も神の事です、っていうもんだから!私もリクもどうしよーって思ったわけ!」

・・・空っ・・

「でも、・・」
りかちゃんは続けた。
「オーナーはフッって笑ったの、。」
「??」
「その状況でなに?って思うでしょ!
そしたらね、空に「神を潰す権利をくれって事か。」ってわけわかんない事言い出したのよ!」
「え・・」 潰す・・権利?
「でも、そのオーナーの言葉に今まで笑ってた神がピタッと止まって、固まった。」
「?」
「空の言った言葉の意味をオーナーはわかってて、それを意味した言葉は神にもわかったらしく、リクもソレ聞いて固まってた。私だけは何がなんだかわかんないから、ど~ゆうこと?って聞いたのね、そしたら、空もオーナーもリクも真剣な顔してるじゃない?ただ1人神だけは真っ青になってたけど・・。」
「え・・?私もわかんない」
「でしょ!くやしいから、こっそりリクにその意味を聞いたらさぁ・・
・・どうも「潰す」は、業界削除=二度と表に出れない顔形にされる。ってイミで「権利」は、空がソレを自分にやらせてくれって言ってるんだ!って!」
「っ??」 え?削除??え?二度と?表にでられない??そ、空っ??
「・・本気だったみたいよ空。その意味聞いてから空を見たら目つきがいつも以上に鋭かったし。」
「!」
「んと、ここまでが、私も一緒に居て聞いてた話。」
「え?」
「そのあと、オーナーが空と2人で話をするから。って言って私もリクも神の奴も部屋から出させられたの。神は逃げる可能性があったから、チーフを呼んで別室に禁固されてたたけどね。」
・・空と2人きりで・・はなし?
「1時間くらいかな?空だけ部屋から出てきて、後の事はオーナーに任せる事にしたって、たぶん、神はここも、学校辞めるだろうって、そう言って。」
「じゃ、お前は?ここ、辞めないよな?」、リクが空にそう聞くと、
空は「ああ」って頷いて自分の部屋へ戻ってっちゃった。」
「・・  ・・ ほ」
「ほ?」
「ほ・・んと・・?」
「んー・・オーナーに任せた以上、空があそこを辞める理由ないしね。しかし行動早いよね~♪オーナー」
「え?」
「神の退学。」
「あ・・」
「普通の人じゃ、昨日の今日でこんな行動はとれないよ。」
ああ・・確かに・・あまりに急で驚いたもんな。
「あ、美未香にしてみたら、辞めた方が良かった、かな?♪」
からかうようにそんな事を言ってくる、りかちゃん。
「そ、そりゃ、や、めて欲しいけどっ//でも、神さんに・・ううん神さんだけじゃない、誰かの事を傷つけるくらいだったら辞めないでほしい」
「おおお!」 またふざけてわざとらしい声を出す。もぉ!
違うんだって。
そんな事したら・・また空、傷つくじゃん
私は空にこれ以上心を痛めてほしくないだけ。

ただ・・
それだけなんだ・・よ


目の前には空の首筋・・
いつもつけてるシルバーのネックレスが少し頬にあたって痛い。
ギュッ・・空の冷たい体を私も抱きしめかえした。

「・・麗騎士を・・やめなくて良かった。
――――ホントは辞めて欲しいけど」
「は?なんだソレ?」
「あ、んなっ!潰すとか!権利とか、そんな理由じゃなかったらっ、!」
「!」
「普通は辞めてほしいと思うでしょ
・・彼女だったらさ。」
「---!」
言ってて後悔した。
そんな事・・空だってわかってる。
それが無理だってこともわかってる。空には空の事情があるし、ソレを補ってやれる力も持ってないくせに。私は
勝手なコト・・
言ってる。

「・・辞めるって理由、ほんとは何でも良かった。」
ギュ
「え?」 抱きしめられてる腕に力が加わる。
「やっと俺のもんになったってーのに。無理言ってやらせてもらってる裏方は今月いっぱいだし、それ終われば指名は無しとしてもお前以外の女に接しなきゃいけねぇし!そーゆーのすげイヤんなってた。いつも不安を隠そうとしているお前の顔を見るのは
――――マジ辛かった。」
「!」------っえ??
「オーナーはさ・・神の前だからあんな事を言ったけど、実は俺のそういう気持ちをわかってやがった。」
「へ?」
「俺がお前と付き合ってんのも知ってた。」
「!」
「正直、やべーって思ったよ!そんなんお店ではご法度だからさ。」
う、うん!だよねっ!前にかわいい弟くん(実は同い年だった)も重々に言ってたもんねっ(><)
「しかも、俺は得にあの店に、オーナーに、世話になってるってーのに。」
う、うん!だよねっ!住まわせてもらってるもんねっ(><)
「こんなに世話になってんのに、大事な女ができたから辞めたいだなんて言えねーし!」
・・だ・・よね。
「でも、言っちまった。」
・・だ・・よね。-------言っちゃうよね・・・ぇーって?!
「っああっ???」
見上げると、空が舌をべーと出して笑ってる。
「っえっ??////あ?え???い、言っ、言ったぁ??????」だとぉぉ???
「しっ!」 学校の時のように空は口に指をあてる。
「///むぐっ!!」 慌てて口を一文字に閉じた私は、そのままの顔で空を見た。
「んとに!でけぇんだよ声、夜中っつーこと忘れてんだろ!」
んむんむ!!口を閉じてるから首をつかって頷く。
で、
「ど、どうなったの??そんなん言って!!」
小声だけど、辺りはシンと静まり返ってるため、充分声は伝わる。
「・・ん・・」
「ん?」なんだよ??早く教えろ~~~~
「・・1つ条件を出された。」
「へ?条件??」

「ああ。ソレをやる気になったら、堂々と辞めさせてやるって・・言われた。」
「な・・」 によ??その条件ってっ!
「・・・・」
「・・・・」 ゴクリッ・・

「1回だけ・・」
「1回だけ?」
「・・・・」
「んっ?」っだよっ!言えよっ!
「オーナーと寝る」
「オーナーと寝・・っ!げっ!!!えっ??!!」
な、っ、なぬ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっ??!!
「えっ???お、オーナーって女だったのっ??!!」
「いや。」
「えっっ??違う???え?」
「男。」
「は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ////////????????」
ブッ!
「はっ?///??」 なに?今笑った????
「声、でけーし、ククッ♪」 苦しそうに声を殺しながら笑ってる空。
「は///??なになに??笑えるとこ??ソコ??」
フツー笑えないでしょ~~~~~~~~がっつ(怒
「なワケねーだろ!ははっ♪」
「へっ??」
「冗談だよ、っつたく。そんなん俺がするわけねーじゃん♪」
「は??」ぁぁぁ??????
じょ・・冗談って、あーた!言っていい冗談ってもんあるでしょーがっ!!
思わず、少しだけ想像しちゃったじゃんかっ///////!!

「くくくっ♪」 ちっ!まだ笑ってるしっ!!

「じゃぁ!!なによ!その条件って!!それも冗談?」
む~~~っとした顔と声を出して聞きなおすと、
空はやっと、笑うのを止めて私の顔を真剣に見つめなおしてきた。

「いや条件出されたんはホント。
・・・お前にとっては、こっちも嫌って言う。」
んん??また不可思議なコトを言ってきたぞ?
でも?
私が・・イヤって言うようなコト・・
嫌だなって思えること・・

空が、他の女の子といる・・こと。

だけど・・?
「えっ??」 もしかして!!
私のわかりやすい顔を見て、空は察知したんだろう
コクッと頷いた。
「え?ヤダ、なに??」 焦る私に空は優しく
「一般客は入れねぇ、あくまで、VIP会員の客だけを相手するショーを開く。相手するっつても、ダンスだけだ。・・安心しろ。」
「ぅ・・」
ダンス・・だけ??
でも・・この前の時・・ハグしたじゃん
「ハピバの時とは違げぇーよ!」
「!!」 また、心読まれたっっ??!!!
「あン時は、原因お前だし!、あ、今回も原因お前か!」
「は?」 え??同じっつーことは!また他の子とハグするんですかいっ??
「あ~~~~~~~~~~っ違う!原因は同じでも思いは全く違うから!」
「!」
なんか空が一生懸命言い訳してる。
あの鬼畜様が私にいっぱい安心をくれようとしてる。

・・・だから・・

「うん。」
「え?」

笑ってそう答えられたよ。空。

でもね。
「ねぇ、VIPってコトは私もそのショーに参加できるんだよね♪」
「は?」
「いいよね♪私も踊ってもらって♪」
一個だけいじわるしてもいいよね?♪

「・・・ぅ」
言葉に詰まる空。
でも、すぐに
「ああ・・イイケド、お前ダンス踊れんの?」
「は!!」
反撃してきやがったっ!!!!
クッソ~~~~この状況で反撃してくるとはっつ!!
なろぉ!
「れ、練習するもん!!空のばーかっ!もう寝るから家に入るっ!」
「なっ!!」
悪者の棄て台詞のごとくそう言葉を吐き捨てると、すぐに回れ右して駆け出そうとする。
それを空は私の腰に腕を回しこんで軽々と阻止した。
そして、力強く後ろから抱きしめてくる
「--////ぅ、はなっ・・し!」
一応は抵抗してみたがそれは無理なんだとわかり、
はぁ・・と深くため息をついて大人しく動かずに居ると
「オーナーにOK出すぞ?マジでいいんだな?」
そんな確認をしてきた。
「・・・うん」
さっきそう言っちゃった手前、それしか言えない。
「・・・・・」
「・・空?」 なんで何にも言わないの?
「ホントはさ。
お前に話そうか悩んでた。
話したら、またお前が・・辛い思いすんだろうって思ったし、だったら、何も言わないでそんなショーなんてやらねぇでこのまま麗騎士で働いた方がいいんじゃないかって。」
「・・・・」 
「でも美未香にとってはソレが一番、嫌なことなんだって気付いた。
俺が反対の立場だったら、ぜってぇヤだかんな!」
「!」
「悪ィ、勝手なコトばっか言ってんな俺。」
「・・・・空」
「ん?」
「大丈夫だよ。信じてるからさ。」 そう自分にも言い聞かせてる。
 
「ん」
それを聞いて安心したのか
空は抱きしめてる腕をゆっくりはずして軽く後ろ髪にキスをした。
私はそのままゆっくり歩き出し、1回も振り返らず家へと戻り部屋へと向う。
途中、涙が零れた。
ぽろぽろ零れてきた。
止められない
部屋に入った時に声を殺して泣いた。
どうして?
信じているんでしょ?
大丈夫なんでしょ?
なんで泣いてんの?私。
ばかじゃないのマジで。
「うん」なんていわなきゃ良かった。
・・・なんで、私はそこで強がったりしちゃうんだろう
ホントは
空が他の女の手を握るのも、目を会わすのも微笑むのもほんとはすごく嫌なくせに
それが本音なくせに!
空にも正直に言えばよかったじゃんか!
っ・・どうして・・
う・・
こんな・・っ

私はいつも後悔ばっかしてるの・・っ

月末の元カノとの事もあるせいかもしれない。
それがまだ解決してないうちにまた一つ不安になる事ができて、私の頭は崩壊状態だったのかもしれない。

空の前では虚勢張って平気そうにしてたけど、一人になった途端・・これだ。
なんかの糸がぷっつり切れたみたいで、
涙が次から次へとあふれ出てくる。

もっと・・・普通の人にすれば良かった。
あんなにモテる人じゃなかったら、こんな不安にならなかっただろーに。



そんなキモチを心の隅に持ってしまった私に、
この後、大変なことが起きてしまう。


それが起きたのは・・
月末、空がお金を持って元カノに会いにいってる最中だった。