「こーら」

 梓が間に割って入った。

 くじの交換を頼んできた女の子がうろたえている。


「聞こえてる。交代される相手の身にもなれ」


 梓の言葉を聞いて周りを見ると、キョロキョロしながら独りで佇んでいる男の子が目に入って、居たたまれない気持ちになる。

 まだ相手がこの子だって気づいていないのかも。よかった。


「はーい」

 女の子はしょんぼりしながら去っていった。


 助けられちゃったな。


「ありがとう」

 私がそう言うと、梓は目をぱちくりとさせた後、ニヤリと笑った。


「ありがとうってことは、止められた方がよかったってこと?」


 面食らった。


「そ、そんな片言隻句を捉えて」

「へんげんせきく?」

「深い意味はないってことが言いたいの!」


 梓といると調子が狂う。

 私は今どんな顔をしているのだろう。また赤くなってしまっていないだろうか。


「よろしく、それじゃ」

 逃げるように梓から離れた。


 リストを作っている人に5番だったことを告げると、すぐに席に戻る。

 自分でも可愛げがないな、と思う。

 もうちょっと素直になれたらいいのに。