「昨日配ったプリントで説明していなかったところがあるので出してください」

 担任の先生がそう言った瞬間、皆が一斉に机の中やらカバンの中をまさぐり始める。

 私もプリントを挟んだファイルを取り出した。


「忘れた人は隣の人にでも見せてもらって」

 先生のその言葉を聞いてなんとなく周りに目をやると、寺元梓の机の上にはプリントがない。


 そのまま視線を上にずらすと寺元梓と目が合い――バッ、と音がしそうなくらいの勢いで反射的に目を逸らしてしまった。


 何をやってるの、私。さすがに感じが悪すぎる。

 プリントを見せるくらい、と思い直しもう一度寺元梓の方を見ると、後ろの席の男子に声をかけていた。その人に見せてもらうようだ。

 わざわざ私に頼まずとも快く見せてくれる人がいるならそちらにいくのは当然である。


 自分の態度が原因なのだけれど、心に(おり)が残った。