隣の圏外さん



「謎解きの謎の用意はどうするの? 難しそうじゃない?」

 クラスの1人が文化実行委員に疑問を投げかけた。


「あ、それなら」

 この前の部活での会話を思い出して、考えるよりも先に声を出してしまった。

 クラスの皆がこちらを見ている。


「常盤君が詳しい、かも」

 声が尻すぼみになる。


 勝手に名前を出しちゃったの、よくなかったかな。

 そう思って常盤君がいる方を見ると、特に不機嫌そうな様子もなく、澄ました顔をしている。


「やります」

 常盤君はすぐに快諾した。

 ええ。新人大会に誘ったときと態度が違いすぎる。


 椅子から転げ落ちたくなる気持ちを抑えていると、常盤君が続けて言葉を発した。

「テーマとかストーリーが合った方が面白いと思うけど」

 なるほど。確かにそうかもしれない。


 何かないかな、とぐるりと周りを見る。

 すると、さっきメイド喫茶を提案していた子が、近くの席の子にコスプレできなくなったと嘆いているのを視界に捉えた。そうだ。


「洋館からの脱出とか、人形屋敷からの脱出とか、そういった設定にして案内人が衣装を着るのはどうかな」

「おっ、永瀬さんナイス!」

 落ち込んでいた子がまた元気を復活させてこちらに親指を立てた。


「異論はありませんか」

 結局、誰も異を唱えることなく、それで決まりとなった。


 文化祭が今から楽しみである。