隣の圏外さん



「ずっと後悔してた。中学のとき、あのまま転校しちゃったこと。どうせ離れなきゃいけないなら、俺の気持ちを伝えておけばよかったって」


 自分でもわかるくらいに、脈が速くなっている。

 今が冬でよかった。

 コートを着ていなければ、それが梓に伝わってしまっていたかもしれない。


「はは、すげー耳真っ赤。可愛い」

「えっ」

 慌てて耳を手で押さえる。


「隠さないでよ」

 手の外側から、こもった梓の声が聞こえた。


 私ばっかりが心を乱されている気がする。

 梓は、今どんな顔をしているのだろう。

 意地悪く笑っているのかな。


 見たい。

 そう思って、回された梓の腕を解き、くるっと梓の方へ向き直った。


「梓だって、赤い」

 梓を見上げると、初めて見る顔をしている。

 これほど照れている梓は見たことがない。


「うるさい」

 梓は口元を覆って視線を横にそらした。


 梓も私と同じなのがわかって、嬉しいやら恥ずかしいやらでこそばゆい気持ちになる。