ここで渡さなければ、きっと何も変わらないだろう。

 勇気を出せ、私。


 梓の部活が終わるのを待って、そこで渡そう。

 次こそは。


 何度目になるかわからない決心をして、誰もいなくなった教室で勉強しながら待つ。

 でも、これから梓に告白するのだと思うと、全然集中できない。


 勉強はやめて、下校時間になる前に部活の様子を見に行こう。

 梓が帰ってしまわないように、部活が終わったらすぐに声をかけなくちゃ。


 そう思って、運動場へ行った私は目を疑った。


 サッカー部が練習をしていない。

 今日ってサッカー部が休みの曜日だったっけ。


 気づいたときには、駆け出していた。

 そして一縷の望みにかけて、学校内のどこかに梓が残っていないか確認して回る。


 しかし、当然と言うべきか、梓の姿はどこにも見当たらなかった。