「ごめん。勉強する時間、なかったね」

 部活を終えて放送室を出るとき、倫太郎君に声をかけられた。

 申し訳なさそうな顔だ。


「いやいや、倫太郎君のせいじゃないじゃん。それに、こんな風に全員で練習できて嬉しかったよ」


「まさか先輩が急にやる気出すとは思わなかった」

 倫太郎君の言葉に同意して頷く。


「うーん。どこかで勉強する?」

 倫太郎君が、放送室の扉を手で押さえながら言った。


「いいの?」

「いいよ」


 思いがけない展開だ。

 倫太郎君が時間を割いてくれるなんて。

 驚いて、目を見開いてしまう。


「人に教えるのって、自分の勉強にもなるって言うからね」

 倫太郎君は表情を変えずにそう言った。