次の日、家を出ようとしたところで、母親に声をかけられた。

「お父さん、次の大会はいつなんだって言っていたわよ。一度見に行った方がいいかなって」


 見てから判断しようと思ってくれたのだろうか。


「えー。恥ずかしいし、わざわざ見に来なくていいよ」

 全国大会ならまだしも、規模の小さい大会で参観に来られると気まずい。


「厳しく当たっている割には、結衣子に嫌われるのが悲しいみたいね。ふふふ」

 母は口に手を当てて笑った。


 少しは私に歩み寄ろうと考え直してくれたのかもしれない。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 家を出て、駅へ向かい、電車に乗る。

 そして電車に揺られ、窓の外を眺めながら、昨日のことを思い出していた。