そのままクラスメイトと一緒に何組かの受付をこなしていると、ひょっこりと男性が顔を覗かせた。
わあ、イケメンさんだ。
あの制服、どこのだったっけ。
「梓、いる?」
男性がそう言った瞬間、隣に座っていた女の子が立ち上がって梓を呼んだ。
私はその人になぜかじっと見つめられている。
「あれ、君どこかで……ああ、そうだ。梓の中――」
物凄い勢いで梓が飛んできて、ガッと手を回し男性の口をふさいだ。
「兄貴の目当て、このクラスじゃないだろ。今立て込んでるから、そっち行ってきて」
梓はそう言うと手を放し、今度は追いやろうとしている。
梓のお兄さんなんだ。
兄弟そろって美形とは目映い。
「お兄ちゃんに対して冷たくない?」
お兄さんはしょんぼりとした顔をしている。
「兄貴が余計なことを口走りかけるからでしょ」
そうして梓に押されるがまま、お兄さんは去っていった。
嵐が過ぎ去ったかのような気分だ。
その後も順調に受付を遂行し、当番の時間を終えた。
自由時間を得てからは、昨日行かなかったところを中心に凛ちゃんと回る。
スーパーボールすくいにヨーヨー釣り、そして軽音部の演奏。
それらを満喫して、今年の文化祭は終幕を迎えた。