食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 まずもって、気に入られるというのは男女のそれという意味だったのでしょうか?
 それから玉の輿ってどういうことでしょう?
 あれ?
 そういえば、菜々さんも学生相談室の場所を聞いたときに、玉の輿狙いがどうのとか言っていた気がします……。
「あ、いや、何でもない。まぁ、怒らせてしまったからといって、いきなり首になるようなことはないとは思うけれど……」
 チーフに肩をぽんぽんと叩かれました。
「チーフ?いったい、学生相談室の……あの、黒崎さんにいったい何が?」
「早く行っておいで」
 ぐるぐると頭の中でチーフの言葉が回ります。
 怒らせると首?
 黒崎さんはイケメンでモテます。
 えーっと、黒崎さんと恋仲だと疑われたら、黒崎さんにご執心の女性から嫌がらせを受けて、首とか……。
 いや、そうじゃありませんね。黒崎さんを怒らせるなら……黒崎さん自身が私を首にできるっていうことですよね。
 そういえば、菜々さん、学生相談室は大学を動かすだけの権限があるとか言っていた気がします。
 ……それは、人事についてもということなのでしょうか……。
 怒らせるなと言われましても……。
 すでに、前回、勢いで乗り込んでしまいました。
 学生からのご意見に「相談室にバカにされた」と洗濯機のカタログ付きのご意見が入っていたからです。
 ……一緒に百均に行って、それから……。えーっと……。
 特に怒らせた記憶はありません。
 それどころか、学生に悪いことをしたと反省していたようです。
 ……で、今日は何の用なのでしょう?

 学生相談室をノックすると、珍しく返事がありました。
 すぐにガチャリとかぎの開けられる音がして、ドアが開きます。
 言われるままに中に入り、ソファに腰を下ろしました。
 ソファテーブルの上には、この間の洗濯の相談用紙が貼られたご相談の紙が置かれています。
 黒崎さんは、私の向かい側に立つと、腰かけずにぺこりと頭を下げました。
「白井さん、降参です。教えてくださいっ!」
 降参?
 教える?
 なんでしたっけ?
 もう一度、相談用紙に目を通します。
【洗濯を干す場所がなくて乾かなくて困ってます。コインランドリーにも行けない。何とかしてほしいです】
 ああ、思い出しました。そうです。
 前回は、前半の洗濯物を干す場所がないということに触れたのです。