食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「本当?僕がまた何か知らないうちに不快にさせるようなことを結梨絵さんにしてしまったのではないですか?」
「また?いえ。一度も不快になるようなことはありませんけれど?」
 私の言葉に、ほーっと、息を吐く音が聞こえる。
「またというのは、仕事で……ポカをしました。相手のことを考えたつもりが、相手を貶しているように受け取られてしまって……」
 ふと、ご意見用紙に書かれた、ライバル君のことを思い出しました。
 私の何を持ってライバル視しているのかいまだにわからないけれど……。
「すべての人にわかってもらうことはむつかしいですよね。……誤解されるとつらいです。でも……」
 ライバル君を怒らせたり傷つけたりしたくなくても、どう私の言葉を受け止めているのか分からないけれど……。
「大丈夫です。相手のことを考えていることを、親しい人は知ってくれてます」
 ライバル君とのやり取りをすべて見ているチーフは、ご意見用紙の返信を褒めてくれる。
「誤解されたのであれば、誤解を解くようにすればいいのです。あの、親しい人が、味方です。和臣さんはそんなつもりじゃなかったんだよって、機会があればきっと、その人に伝えてくれると思います……だから、あの……」
 実際、誤解したまま二度と縁のない人もいる。私の言っていることは、きれいごとで。
 それでも、必死で言葉を続けてしまうのは……。
 不器用だけど一生懸命な彼が、自分に重なる部分もあって……。
「私、和臣さんは人間的に素敵だと思いますよ?」
 自分に似ているから素敵というのもおかしな話だと、思ったけれど……。
 自分にとって魅力的だと思うのだから、言葉選びとしては間違っていませんよね?
「人間的……に?」
 戸惑う声が聞こえます。
「あ、その、見た目が悪いとかそういうことじゃなくて、えっと、単にどんな顔かとか見えないので、えっと……」
 ふわりと、次の瞬間優しくて少しだけ甘い香りが鼻をくすぐった。
「え?」
 小さな声が漏れる。
 和臣さんの体が私と密着しています。
 抱きしめられています!
「嬉しい、ありがとう結梨絵ちゃん……」
 あ、抱きしめられているなんて、まるで恋人のような表現は失礼でした。
 ハグです。よほど私の言葉が嬉しく手思わず抱き着いてしまったらしいです。試合に勝利した選手が抱き合うみたいな感じでしょう。
 ……と思っていても。