食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「プランターでも?和臣さんは物知りなんですね」
 すごいなぁと思って誉め言葉が自然に口から出ました。
 ところが、和臣さんははっと息をのむと、コトンと缶をテーブルに置いて「あー、またやってしまった」と小さくつぶやきました。
「え?」
 首を傾げると、丸山君がこちらを見ました。
「気になると、すぐに確かめたくなって缶の説明書きを読んだり調べたりする細かさとか、知っているうんちくを長々と話し始めるところとか……。ちょっとめんどくさい男だなーって思わない?」
 めんどくさい?
 誰がそんなことを言ったのでしょう?
「私は知らない話を聞くのは楽しいです。でめんどくさいと思うことはありませんよ?」
 菜々さんが楽しそうにふぅーんと声を上げました。
「だってさ」
 菜々さんが顔を和臣さんのほうに向けた。
「ありがとう、結梨絵さん。そう言ってもらえると嬉しいんだけど、この癖はアプリのバグ解明方法についてや、数学者の歴史的偉業や、IT産業における株価予想とか……その、相手の興味があるなしに関係なく出てしまうんで……」
 ああ。
「確かに興味はありませんし、話をされても理解できなくて申し訳ないなぁと思うかもしれないですが……知らない話を聞くのは楽しいです。アプリってそんなにいろいろ作るのが大変なんだなぁと思うかもしれませんし、もしそれが使ったことのあるアプリだったら秘密を知ったみたいで嬉しくなるかもしれません。あと、その話がきっかけで興味のもてるアプリが見つかるかもしれませんよね?」
 丸山君が和臣臣さんの背中を叩いた。
「よかったな、和臣!結梨絵さんみたいないい人がいて!」
「あ、ああ」
 へ?
「いえ、私、いい人じゃないですよっ!その、私もどちらかといえば、知っている話をついついしちゃうタイプなのです」
 話を聞くくらいでいい人だと思われるなんて、買いかぶりもいいところですよ……。
「そうなの?じゃぁ、似たもの同士?」
 丸山君の声は弾んでいる。
「似てもいないと思います。あの、私はそんなむつかしい話はできなくて……」
「結梨絵さんはどんな話をするの?」
 和臣さんの言葉に促されて、さっき思い浮かんだことを話します。
「初夏ちゃん、山わさびを食べたことがないと言いましたよね?」
「はい。わさびっていうと、普通のしか食べたことがなくて」