食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「いや、あの、本当はおいしいサンマを食べられる店を探せたらよかったんだけど、時期的に見つけられなくて。だったら、せめて、いろいろなサンマが味わえればと……」
「ご、ごめんなさい、じゃないですね、ありがとうございます。あの、まさか本当にサンマなんて言った言葉を参考にしてもらえるなんて……」
 魚の特売日に頭がいっぱいで、飲み会のことを考えていたわけではなかったので、申し訳ないです。
「いや、お礼を言われるようなことは……。他の人のリクエストが、おいしい酒、焼き鳥、面白い店だったから……で」
 よかった。ほかの人のリクエストも考慮した結果だったのですね。
「ああ、この店は確かに面白いですし、お酒の種類も豊富でおいしそうですよね。あと焼き鳥の缶詰も置いてある……最高じゃないですか!」
「いや、でも、丸山の言う通り、女性のことももうちょっと考えるべきだったよね。ちょっと煙草の煙が髪や服についちゃうかな……」
 頭を横に振る。
「大丈夫ですよ。私も菜々さんも初夏ちゃんも、みんな楽しんでます。あ、一つお願いしてもいいですか?」
 なぜ、ここまで低姿勢なのでしょう?丸山さんによっぽどこっぴどく言われたのでしょうか?
 本当に別に気にしていませんし、、お店選びを任せたからには、文句なんて言う立場ではないのです。
「お願い?」
「眼鏡がないので、缶詰の文字が読めなくて、どんな缶詰があるのか教えてもらってもいいですか?」
「もちろん。サンマの味噌煮、サンマの塩焼き、サンマの水煮」
 定番だけれど。水煮?そのまま食べるんでしょうか?
「サンマの蒲焼、醤油煮、味噌カレー」
「カレーですか?しかも、味噌?」
 私の声に、和臣さんは棚から味噌カレーを取ってくれました。
 顔の前に近づけて缶を見ます。20センチの距離まで持ってくれば文字も読むことができるのです。
「そういえば、この前もメニューをそうやって見ていたね。本当に見えてないんだ」
「そうなんですよ。眼鏡なしだと0.1ないので。まるで雨に濡れたガラス越しの景色を見ているみたいにぼんやりして見えます」
 気になるので、サンマの味噌カレーをとりあえずキープしてみます。