食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 和臣さんは、何でもおいしく食べてたし、口に物を入れているときにしゃべらないとか、箸の持ちかたとか動かし方、きれいな食べ方をしていましたので……。
「そ、そうか、ありがとう」
「ありがとう?」
「和臣はさぁ、顔がいいから女は寄ってくるんだけど、むしろ顔が良すぎて女に嫌な目にあうことが多くて、ちょっとした女性恐怖症なんだよねぇ。だから、見た目を褒められてもなぁんにも嬉しくないんだって。贅沢な悩みだよねぇ」
 丸山さんの言葉に、和臣さんがうるさいと小さく声を上げる。
「えっと、ごめんなさい。あの、見た目は、その、実は眼鏡を外すと顔がよく見えないので、もし見えてたら私も、イケメンですねと言っていたかもしれません」
「あ、え?顔が見えてない?そ、そう。じゃぁ、本当に、顔は関係なく、僕と話をして楽しいって言ってくれたんだ……」
 和臣さんの弾んだ声を遮って、菜々さんが声を上げました。
「ほーら、話はあとあと、店に入ろう!座って話そう!」
「菜々ちゃんは、酒飲みながら話そうだろう?」
「ふっふー。もちろんですよ、飲み会だもの!」
 菜々さんに背中を押されて店の中へ。
 うわぁー、すごい!
 なんといえばいいんでしょう。
 漫画喫茶は、漫画の詰まった棚が所狭しと並んでいます。ここには、漫画の代わりに、缶詰が並んだ棚が所狭しと並んでいます。
 残念ながら眼鏡不在のため、なんの缶詰が並んでいるのかは分からないけれど。きっと、私が普段スーパーで買っているような缶詰とは違うんでしょう。
 席に案内され、着席すると店員さんが説明してくれた。
「缶詰はセルフサービスになっております。好きな缶詰を自由に選んでください。温める場合は皿に移してあちらの電子レンジで。空になった缶はこちらの袋にお入れください。会計は缶の数で行います。ドリンクメニューはこちらになります」
 飲み物を頼んで、さっそく菜々さんが立ち上がる。


「何を食べよう!こんなに缶詰に種類があるなんて思ってなかった!」
 うん。そうですよね。菜々さんの声からわくわくが伝わってきます。
 みんなが立ち上がり、各々缶詰を探しに行く。
「結梨絵さん、サンマの缶詰のコーナーはこっちですよ」
 え?
 和臣さんに声を掛けられました。
「もしかして、あの、私がサンマを食べたいと言ったから、この店を?」