食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 だって、そこには押し付けや、探りの雰囲気はないですからね……。
 一人暮らしをしていると、こうして私のことを心配して声をかけてくれるのはありがたいことだと感じるのです。
「なんでかねぇ。白井ちゃんみたいにいい子に彼氏ができないのは……」
「別に欲しがってないからでしょうか?」
 私のように、おばちゃんたちに囲まれて学食で働いて、仕事の行き帰りに寄るところがスーパーという生活してると、よほど頑張って動かないと出会いすらないのです。
「あー、草食女子っていうのかねぇ?最近は男が草食が多くなったから、女子が肉食にならないとなかなかむつかしいんだっけ?ああ、そうだ、学生相談室の黒崎さんはどうだった?昨日会ったろ?」
「え?」
 会うには会いましたけど……。
「ずいぶん、その、顔はいいけれど残念な人だと思いましたけれど……。悪い人ではないのかな……と」
 彼氏にどうかという話であれば、まぁ、全く考えられません。むしろ、向こうも迷惑な話でしょうが……。
 チーフがふぅと小さくため息をついた。
「それはよかった。あんまりいい噂聞かないからね。何か昨日はご意見用紙持って突進していったから。衝突して嫌な目にあったんじゃないかと……」
「あ、そういう心配をしてくださったんですね……」
 ひゃー。私ったら、何を彼氏にどうかとかそういうことだと勘違いしてるんでしょう。
「心配というか、ほら、これ」
 A4サイズに印字されたメールです。
 社内メールのようです。
 食堂責任者へ?
 学生相談室の黒崎より?
「時間があるときにご意見返信係の白井さんを借りたい。この間の話の続きを聞かせてもらいと白井さんに伝えてほしい。事前に連絡をいただけば時間はそちらにできるだけ合わせる」
 声に出して読み上げる。
 そういえば、話が途中でチャイムの音が鳴ったんでしたっけ……。
「白井ちゃんが黒崎さんに会うのが苦痛じゃなければ、昨日と同じ時間帯なら食堂は問題ないけど、どうする?」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃぁ、月曜の午前の時間に伺うと返信しておくよ」
「はいすいません、ありがとうございます。では、失礼いたします」
 ぺこりとチーフに頭を下げて部屋を出ます。

 そのまま菜々さんとの待ち合わせ場所、前回メイクしてもらったロッカールームに足を運びます。