食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「あー、よかった。間に合ったね。頼んだよ!戦争はこれからさ!」
 食堂を見れば、食券販売機にたくさんの学生が並び始めています。
 まだ、食券を手にカウンターに来ている人間の数は少ない。
 よし。今日も戦争を戦いぬかねばなりません!

 仕事が終わり、いつものようにチーフに紙を渡されました。
「お疲れ様です。今日は、残業なしで帰ります。お先に失礼します!」
 チーフから受け取った紙は、相談用紙のコピーを挟んであるファイルにクリップで止めておく。
「ああ、そうか、今日は魚の特売日だっけ?」
「え?なんで知ってるんですか?私、言いましたか?」
 職場で一番の年長者が私の背中を叩いた。
「白井ちゃん、魚、魚って言いながら何度も急いで帰っていったことあるの、覚えてないの?」
 え?
 驚いた顔をすると、その場にいた3人が笑った。
「あははは、いいねぇ、白井ちゃんのそういうとこ。休憩時間にサンマって言ってたのも覚えてない?無意識?サンマの季節じゃないけど、いいサンマが売ってるといいね」
 あちゃー。
 そうかでしたか……。
 そういえば、昼休みに菜々さんからラインが届いてて「何か食べたいものある?」って聞かれて……。
 スマホを手にラインを開きます。
「サンマって送ってますね、私……」
 うん。これ、きっと今食べたいものじゃなくて、飲み会の店選びの参考意見を聞かれたんですよね……。
 失敗……しました。
 まぁいいですよね?きっとみんなに聞いてるんだろうし、他の人の意見を参考にしてもらえれば……。
 サンマのおいしい季節はまだまだ先です。
 でも、なんか突然サンマが食べたくなっちゃったんですよね。
 皮がカリカリになるように、グリルで焼いたサンマに、大根おろしを乗せて、少しポン酢をたらす。
 口に入れて、3度ほどサンマの味をかみしめた時に、炊き立てご飯を口に入れる……。うはー。最高ですよ。
 と、口の中に唾液をためながら臨んだ魚の特売。
 ……残念ながらサンマはありませんでした。
 サバとメバチマグロを買いました。今日食べる分は焼いて、他は冷凍。
「サバは味噌煮よりも塩焼きがおいしいんだよねぇ」
 ぱちぱちとグリルから油の始める音がする。
 はい。こうして目の前でおいしそうに焼けているサバを見ると、口はすでにサバモードに切り替わりました。さようならサンマ。