食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 黒崎さんの目の光が消えました。
 相当落ち込んだように見えます。
 ……したことは褒められたことじゃなありません。
 だけれど、こうして学生の気持ちを考えて心を痛めることができるなら、悪い人ではないのでしょう。
「もう一つ言わせていただければ、たぶん、このサイズの洗濯機は置く場所がないでしょう。一人暮らしの狭い物件に、こんな大きな洗濯機は入りません、置けません、お金があっても解決しません。リサイクルショップで安い乾燥機付き洗濯機が手に入っても解決しないのです」
 黒崎さんの背が心なしかまるまりました。
 職員通用室を通って学生相談室に戻ります。
「知らなかったと言って謝ってもダメなんだろうなぁ……」
 どさっとソファに沈み込む黒崎さん。
「まぁ、そうですね。君が貧乏だと気が付かず、渡したカタログの洗濯機が買えないなんて知らなかった……とは言えませんよね?だから、貧乏人の君にも手が届くであろう百均の商品を見つけてきたから紹介してあげると言われれば、さらにバカにされたと思うでしょうし」
 黒崎さんが、両手で頭を抱えてしまいました。
「大学は何もしてくれないどころか、相談してもバカにするだけ……と学生には不信感しか与えられなかったというのか……。私は、学生の相談は無理なのか……」
 さて。
 いじめるのはこれくらいにしておきましょう。
 あ、別に人をいじめる趣味はありません。
 いっぱい反省してもらえばもらうほど、これから言うことを一生懸命やってくれるかなと思ったのです。
 相談した学生のために、大学側と交渉して大学を動かしてもらわなければなりませんからね。
「さて、黒崎さん。信用を回復するためにできることがありますよ?」
 黒崎さんが顔を上げて私を見た。
 机の上から、相談の書かれた紙をカタログから引っぺがします。
「後半の部分から、何が分かりますか?」
 黒崎さんが相談内容を読む。
「洗濯を干す場所がなくて乾かなくて困っていますという部分からは、1Kなどの狭い部屋い一人暮らしをしている女性かもしれないということが推測できたんだった。その続き……。コインランドリーにも行けない。何とかしてほしいです……か」
 しばらく考えて、黒崎さんは大きな声を出した。