食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 理論的に考えることは得意で、情報を整理することも得意だけれど、想像したり何かを生み出したりということが苦手な人はいますから……。
 結婚した友達が嘆いているのを聞いたことがあります。
 つわりで辛いのに、記念日にレストランを予約した旦那。おまけに花束を買ってきたと。
 花の匂いが臭くてただでさえもひどいつわりがよるつらくなって、花は捨てるしかなかったし、レストランも高いお金を出して食べに行ってもろくに食べられない上に全部吐いた。……そうです。
 旦那は記念日だからって私のことを思ってくれたとは思うけれど、想像力が欠如しすぎてイラっとしたと言っていました。
 男は気が付かない生き物だと聞いてはいたけれど……と、大きくため息をついていました。
 そういえば、そろそろ予定日じゃなかったでしょうか。出産祝いの品を考えないといけませんね。ちょうど今月は残業でいつもよりも収入がありますから、予定よりもちょっと豪華にお祝いできそうです。
 おっと、このまま出産祝いは何にしようと考えだすところでした。
 黒崎さんが一緒ですし、仕事中です。仕事中。
「これ、なんだと思います?」
 手にしたのはプラスチック製のハンガー。
「ハンガーだよな?」
 ハンガーはハンガーだけれど、山形になっている部分に渡された横棒部分に、穴が5つ開いている。
「このハンガーの穴の部分に、ハンガーををかけることができます」
 ほかのハンガーを手に、一つ穴にかけてみせた。
「これで、干すためのスペースを増やすことができます」
「なるほど、1つハンガーをかけた場所に5つ干せるというわけか。そうだ。干す場所がないと言っていたんだ。これなら狭い場所にもたくさん洗濯が干せるようになるな」
 単純に喜ぶ黒崎さんに首を横に振って見せた。
「賃貸マンションでは、部屋の中にそもそも洗濯を干せるような場所がないことも多いって知っていますか?」
 カーテンレールに洗濯物をかけたら、カーテンレールが壊れたという話も聞いたことがあります。
 突っ張り棒を使うのが一番なのですが、これもまた強力なものでなければ濡れた洗濯の重みで落ちてくることもありますし、強力すぎて壁がへこむなんて話もあるのでむつかしいんです。
 相談者がどのような物件に住んでいるかもによりますが……。